RE123超伝導線材の成膜手法としては気相法や有機金属分解法が現在主流であるが、より低コストな手法として、低温環境で高品位なRE123を成膜できる溶融水酸化物法が挙げられる。しかし、この手法は現在、長尺線材の形成に必要な連続的な結晶成長には適していない。そこで、電気化学合成法の応用による連続的な結晶成長のプロセスの確立を目的として実験を行った。研究課題として、Ag電極の溶け出しや、先行研究で確認されたCuOやEu123の析出が確認できないということがこれまで確認されていた。これらの原因として、バブラーの能力不足や、成膜時の液温の測定に問題があることを挙げた。これらの改善を目的として、成膜時の液中温度を測定し、電極付近で測定値と設定値の差異がないことを再確認した。また、バブラーにホットプレートを導入し加熱することで加湿能力を高めた。また、グローブボックス内に湿度計を設置し、ホットプレートの温度を変更することで湿度を制御しながら実験を行った。 これまで湿度制御の導入以前は、溶液の昇温後15時間以上の経過した析出実験では、Agテープが溶解し、結晶の析出は確認できなかったが、湿度制御の導入により、Agテープの溶解を防ぐことに成功し、テープ上に結晶の析出を確認することができた。特に、昇温後21時間の経過後に実験を行った試料に関して、CuOの析出を確認することができた。先行研究において湿度が低い場合にAg電極の溶解が起きるとされていたが、本研究においても高湿度にすることで、電極の溶解を防げることが明らかとなった。 これは湿度が析出物を制御する重要な要素であることを示している。先行研究ではAgワイヤー上にCuO、Eu123などの結晶を析出させていたのに対し、本研究においてはAgテープ上にCuOの析出ができたことから、湿度を精密に制御することで、Eu123相の形成が可能であると期待できる。
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