研究課題/領域番号 |
18J14010
|
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
安川 直樹 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 芳香環構築 / 不均一系触媒 / one-pot合成 / N-O結合 |
研究実績の概要 |
私は、回収・再利用可能な不均一系金属を触媒として、廃棄物低減型有機合成反応を基盤としたタンデム型骨格構築法の開発を目指し、研究を遂行している。その一環として平成30年度は、ニトロソ化合物と共役ジエンのHetero Diels-Alder(HDA)反応で合成した3,6-ジヒドロ-1,2-オキサジン誘導体を基質とした不均一系銅炭素(Cu/C)触媒によるピロール誘導体への変換反応を開発した。本法はCu/C触媒以外の添加剤や溶媒を必要とせず、環境調和型反応としてプロセス化学的適用が期待される。また本反応をHDAに連続させることで、one-potでピロール環を構築することが可能である。医薬品や生物活性物質など様々な機能性物質の基本骨格である多様な置換様式を持つピロール誘導体を系統的かつ簡便に合成できるため有用である。以上の研究成果をまとめ、国際学術誌に発表した(Green. Chem., 2018, 20, 4409.)。また研究過程で、新たに Cu/C 触媒的 N-O 結合開裂の可能性を見出した。N-O結合は化学量論量以上の還元剤の使用により開裂するが、還元剤由来の廃棄物の副生が問題となる。HDA反応成績体を基質として反応条件をスクリーニングした結果、含水アルコールをプロトン源兼溶媒として、Cu/C 触媒と塩基存在下、加熱撹拌することでN-O結合が開裂されることを明らかとした。 平成 30 年 10 月 1 日から半年間、ドイツの Max-Planck-Institut fur Kohlenforschung で Benjamin List 教授の下、有機分子触媒を用いた開発研究に携わった。特に、有機分子触媒をデザインして、反応位置や立体選択性を制御する脱水素型酸化反応のプロジェクトに取り組み、私の研究課題を進展させるための新しい触媒的視点からの展開法を学び、実践することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不均一系銅炭素(Cu/C)触媒的N-O結合開裂を鍵としたピロール誘導体の合成法に関しては、反応機構の解明とHDA反応を組み合わせたone-pot合成法を検討し、プロジェクトを完結することができた。上記の研究成果は、第113回有機合成シンポジウム2018年【春】でのポスター発表を実施し、また筆頭著者として学術論文に報告した(Green Chem., 2018, 20, 4409-4413)。さらにSynfact (2019, 15, 0074)に紹介していただいた。この研究過程で、私はCu/C触媒的N-O結合開裂反応の可能性を新たに見出した。既にニトロソベンゼンとシクロヘキサジエンのHetero Diels-Alder(HDA)反応成績体を基質として、反応条件の最適化検討を実施し、良好な結果が得られた。現在基質一般性やHDAと連続させたone-pot反応への応用を開始している。今年度は様々な置換様式を持つ基質を合成し、一般性ある方法論としての確立を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き、「環境調和を指向した触媒的有機合成反応の開発研究」に取り組む予定である。 [1] 不均一系銅炭素(Cu/C)触媒的N-O結合開裂反応:共役ジエンとニトロソ化合物のHetero Diels-Alder(HDA)反応成績体である3,6-ジヒドロ-1,2-オキサジン誘導体を、含水アルコール溶媒中、Cu/C存在下加熱撹拌すると、N-O結合が開裂し、良好な収率でγ-アミノアルケノール誘導体がcis選択的に生成することを明らかとしている。本法は、HDA反応後に連続して進行させることで、one-potでN-O結合開裂体を得ることが可能である。本年度は、基質一般性を拡充するとともに、反応機構を解明する。 [2] 金触媒的分子内環化反応に続く求核種導入反応:高次官能基化されたフラン環は、生物活性物質などの機能性材料の基本骨格であり、系統的で一般性ある合成法の開発は、有機合成のみならず、多岐に渡る分野で望まれている。今回、金触媒のπ電子親和性を利用し、β-ケトアレンの分子内環化反応と芳香族化合物の導入反応が連続する、タンデム型2-ベンジルフラン誘導体の一挙構築を目指す。様々な価数の金触媒などの反応条件を精査し、一般性ある方法論として確立する。 [3]鉄触媒的β-ケトアレンへの求核種反応:β-ケトアレンをジクロロメタン中、三価塩化鉄(FeCl3)を触媒としてアレ-ン求核種と反応したところ、低収率ではあるがアレン中心炭素にアレ-ンが導入された化合物が得られることを明らかとしている。本法は従来困難な不活性アレンの中心部への求核種導入を可能とするものであり、またFe によるアレン活性化の例は皆無であるため新規性が高い。本年度は、様々な価数、カウンターアニオンを有する鉄触媒や溶媒などの反応条件を検討し、収率の改善を図る。また芳香族化合物以外の求核種を検討して、基質適用範囲の拡充を目指す。
|