研究実績の概要 |
卵管上皮は配偶子・初期胚の輸送を促す繊毛細胞と、初期胚発生に必要な物質を分泌する分泌細胞 (非繊毛細胞) から構成され、両細胞の割合は発情周期を通じて変化する。申請者らは、繊毛細胞数が増加するにもかかわらず増殖するのは非繊毛細胞のみであることを明らかにしており、非繊毛細胞が繊毛細胞へと分化することを示唆してきた。卵管と同様に繊毛・非繊毛細胞を有する気管においては、非繊毛細胞には複数のタイプが存在し、その一部の細胞が繊毛細胞に分化することが報告されている。しかし、これまでに卵管において複数の非繊毛細胞の存在は報告がなく、繊毛細胞への分化過程も定かでない。本研究では、卵管上皮細胞の詳細なキャラクタリゼーションを行うことにより、ウシ卵管における非繊毛細胞から繊毛細胞への分化経路を検討した。 発情周期を通じたウシ卵管膨大部上皮組織におけるKi67, Acetylated tubulin (Ac tubulin), FOXJ1およびMYB, PAX8の共局在を免疫組織化学により検討し、上皮組織内腔表面1mmあたりに存在する細胞数の変化を調べた。 全ての卵管上皮細胞はPAX8かFOXJ1を発現し、共発現する細胞は存在しなかったが、FOXJ1+細胞中にはAc tubulin+細胞とAc tubulin-細胞が存在した。また非繊毛細胞中にはMYB+/PAX8+またはMYB+/FOXJ1+細胞が存在し、MYB+/Ki67+細胞は認められなかった。Ki67+, MYB+およびFOXJ1+細胞数は卵胞期に増加したため、この時期に細胞増殖と繊毛形成が同時に進行することが示唆された。以上より、卵管上皮細胞は形態学的には繊毛細胞と非繊毛細胞に大別されるが、免疫組織学上非繊毛細胞は複数存在し、ウシ卵管上皮においても非繊毛細胞から繊毛細胞への段階的な分化経路が存在することが示された。
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