研究課題/領域番号 |
18J14075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野 道子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 子どもの安全保障 / ジェンダー / パキスタン / バングラデシュ / ベンガリー / ロヒンギャ / 移民・難民 / 無国籍 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、カラチ市内での現地調査を3回実施し、バングラデシュ(1971年以前は旧東パキスタン)から移住してきたベンガリーやロヒンギャの人々のライフヒストリーの聞き取り、路上で物乞いや物売りをして生活しているベンガリーやロヒンギャの子どもたちやその家族にインタビュー調査を行った。また、ダッカでも現地調査を行い、関連する文献の収集や現地の研究者、NGOなどとの面談・聞き取り調査を行った。カラチのベンガリーやロヒンギャの人々の状況分析に参考になると思われるダッカ市内のビハーリー難民居住地への訪問も行った。 カラチに住むベンガリーやロヒンギャの人々のカラチへの移住の経緯や背景、彼らが現在おかれている状況についての研究は、既存の研究がほぼ皆無である。人間の安全保障の分野においても、現地でのインタビュー調査に基づき、無国籍の状態にある移民の子どもたちや女性たちの「語り」から子どもの安全保障を検討するアプローチも、類似の研究が少なく、学問的意義が高い。 これまでの研究の成果は、国際ジェンダー学会で「カラチのロヒンギャ女性と女の子の安全保障ー母と娘の安全な居場所としての路上」というタイトルで口頭発表した他、上智大学および聖心女子大学でのロヒンギャ難民・移民に関するシンポジウムや研究報告会でも発表を行った。また、上智大学イスラーム研究センターから発刊されたWorking Paper Series 30に「「ベンガリー」」として生きるロヒンギャの人々:カラーチーに住むロヒンギャの人々の「語り」から」と題して論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、パキスタンのカラチ市での現地調査を3回(6-7月、10月、2月)、バングラデシュのダッカ市での現地調査を1回(10-11月)実施することができた。現地での文献収集や現地の政府や自治体、NGOなどの民間団体、地域住民関係者からの聞き取り調査、路上で物乞いや物売りをする子どもとその家族への聞き取り調査から一次資料を収集できた。 調査の内容は、学会発表や論文執筆などにより、学術的な貢献を行うことができたと考える。また、パキスタンやバングラデシュに関係する団体の会報などへの寄稿やシンポジウムなどでの報告を行ったことで、広く一般の方々も含めた社会に還元することができたと考える。研究を通じて、日本国内および海外の関連する分野の研究者との学術的交流を深めることもでき、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、これまで現地調査などで収集した調査データを分析し、博士論文の形にまとめた上、パキスタンおよびバングラデシュでの補足調査を1回ずつ実施する予定である。必要に応じて、外部のセミナーや学会などでも報告を行うが、博士論文の執筆を優先して進める予定である。
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