研究課題
本研究は、逆行性越シナプストレーサーである狂犬病ウイルス(RV)ベクターと、順行性トレーサーであるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを利用した双方向性多重蛍光トレーシング手法を確立し、線条体における特定の皮質からの入力部位と特定の皮質へ出力する部位を同時に可視化することで、大脳皮質―大脳基底核ループ回路の入出力様式を明らかにすることを目的とする。まず、①双方向性トレーシング手法に適したAAVベクターとRVベクターの組み合わせの検討について、所属研究室で所持している複数の種類のAAVベクターについて、皮質線条体路の軸索を可視化に適したベクターの検討をラット脳でおこない、最適なベクターを特定した。このベクターは注入後3日程度でラットの皮質脊髄路を十分に可視化できることが分かった。また、②ラットを用いた運動に関連する大脳皮質―大脳基底核ループの構築様式の解明について、ラットの一次運動野(M1)および二次運動野(M2)と大脳基底核の入出力様式を調べるためには、M1およびM2を同定し、それぞれに異なる蛍光タンパク質を発現するAAVベクターとRVベクターを注入する必要がある。当該年度は、M1およびM2の同定に必要な皮質内微小刺激(ICMS)をおこなうシステムの構築に取り組んだ。さらに③サルを用いた眼球運動に関連する大脳皮質―大脳基底核ループの構築様式の解明について、上記の双方向性トレーシング手法をマカクザルの眼球運動関連領野(FEF、SEF、LIP)に適用し、これらの領域と大脳基底核の入出力様式を調べる。サル脳では解析する領域の大きさとラベルの数がラット脳よりも膨大になる。当該年度は、機械学習を利用することでこれらを効率的に解析するシステムの開発に取り組んだ。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、双方向性トレーシング手法に適したAAVベクターの開発、ラットを用いた運動に関連する大脳皮質―大脳基底核ループの構築様式の解明に必要な皮質内微小刺激(ICMS)をおこなうシステムの構築の2項目において当初見込んだ通りの成果を得ている。また、機械学習を利用して逆行性細胞ラベルを効率的に解析するシステムの開発など当初予定通り準備が進んでおり、研究が順調に進展していると考えられるため。
研究は当初の予定通り順調に進展していると考えられるため、今後も当初の予定に従い研究を進める。詳細は以下のとおりである。本年度は、皮質線条体路の軸索を可視化に適したベクターの検討をラット脳でおこない、最適なベクターを特定した。このベクターは注入後3日程度でラットの皮質脊髄路を十分に可視化できることが分かったので、この二つのベクターを組み合わせた双方向性多重蛍光トレーシング手法を確立する。また、M1およびM2の同定に必要な皮質内微小刺激(ICMS)をおこなうシステムの構築に取り組んだ。今後は、このICMSを利用してラットのM1およびM2を同定し、①で確立した双方向性トレーシング手法を使用して、M1およびM2と大脳基底核の構成するループ回路の構築様式を解明する。上記に加えて、①で開発した双方向性トレーシング手法をマカクザルの眼球運動関連領野(FEF、SEF、LIP)に適用し、これらの領域と大脳基底核の入出力様式を調べる。
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Scientific Reports
巻: 9:3567 ページ: -
10.1038/s41598-019-39535-1