研究実績の概要 |
本研究は、水素化物イオン含有する配位高分子(Coordination polymers, CP)を系統的に合成し、CP結晶の構造と水素(H2)放出特性の相関を明らかにすることを目的とする。出発物質として水素化ホウ素マンガンに注目した。アルゴン雰囲気下禁水条件で液相合成を検討したところ、様々な中性ピリジル配位子から6つのBH4-含有CP結晶を合成、単離することに成功した。単結晶X線回折測定から水素原子を含めたBH4-の配位様式を同定した。架橋配位子の嵩高さや配位力によりBH4-の局所配位配位構造が変化することを見出した。熱重量分析(TGA)測定とガスクロマトグラフィー(GC)測定を併用し、昇温に伴うH2放出を評価した。H2放出は確認されたものの、同時に架橋配位子の脱離・分解も確認された。これは、昇温条件ではマンガン(II)と配位子の配位結合が保持できず架橋配位子が脱離することに起因すると考えられる。 一般に、金属イオン-配位子の配位結合の強さはHSAB則により説明できる。先の結果を踏まえて、Softな中性ピリジル配位子とより強く配位結合することが期待されるSoftな亜鉛イオンに着目した。[PPh4][Zn(BH4)3]を合成して出発物質として用いた。アルゴン雰囲気下禁水条件での液相合成から、ジピリジルプロパン(dpp)と一次元鎖状構造をなすCP結晶[Zn(BH4)2(dpp)]を単結晶として単離した。TGA測定、GC測定からH2のみが放出されていることを確認した。また、亜鉛イオン以外にもマグネシウムイオンやカルシウムイオンといった多様なBH4-含有CP結晶の合成に成功し、水素化物イオン含有CPの化合物群のライブラリを拡張することができた。
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