今年度は、(i) Mo同位体組成に関する研究・(ii) 次の研究に向けた新たな同位体比分析法の開発 を行った。 (i) Sr・Nd同位体比測定に続いて、コンドライトのMo同位体比測定を行った。Mo同位体比測定の結果からは、SrやNdと異なり、比較的低温の領域で形成したコンドライト(炭素質コンドライト)と、比較的高温の領域で形成したコンドライト(非炭素質コンドライト)に、明瞭な同位体比の差が観察された。この結果は、国際誌のThe Astrophysical Journalに掲載された。更に、前述のSr・Nd同位体比測定の結果も含めた総説論文が、国際学会プロシーディングスのJPS Conference Proceedings、国内誌の遊星人に掲載された。 (ii) 更に、今後の研究のために、新たな同位体比測定法の開発に着手した。まず、Nd同位体比測定を行う際に、質量分析計内で未知の同位体分別が起きていることを新たに発見し、その効果を補正する分析法を提案した。その結果、Nd同位体比分析精度が最大1.5倍程度向上した。この結果は、国際誌のGeochemical Journalに掲載された。次に、現在まで隕石の同位体比測定法が確立されていなかったEr・Yb同位体比分析法の開発に着手した。真空下でクロマトグラフィー抽出を行う新たな分析法を立ち上げることで、今まで難しかったEr・Yb同位体比分析を可能にした。この結果は、国際誌のGeostandards and Geoanalytical Researchに掲載された。
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