研究課題/領域番号 |
18J14238
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
丹治 寛樹 明治大学, 明治大学大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | システム同定 / 線形システム / ノンパラメトリックベイズモデル / 状態空間モデル / 双曲線正割分布 / 優ガウス性 |
研究実績の概要 |
本研究における第1年度目の主な計画は,線形な音響システムの同定において観測雑音が優ガウス性の分布に従うと仮定し,未知の有限インパルス応答(FIR)システムの次数と係数を同時に推定するアルゴリズムを実現することであった.このテーマに対して本年度は論文誌に1編,国際会議に2編の論文が採択された.さらに,研究成果の一部を国内の研究会で発表した. 未知システムの出力に混入する雑音が従う分布には当初ラプラス分布を想定していたが,独立成分分析の分野で用いられてきた音源の分布と深い関連を持ち,ラプラス分布よりも最適化が容易な双曲線正割分布を用いて雑音をモデリングした.このモデルに基づいて本年度は以下の課題に取り組み,成果を上げた.(1)未知システムの次数が既知の場合における係数のオフライン推定(2)FIRシステムの係数のオンライン推定(3)未知システムの次数と係数の同時推定.(2)においては,音響システムに限らず,未知のシステムが1出力の線形状態空間モデルで記述できるシステムに対し定式化を行った.(3)では,次数についての何らかの尺度を用いて次数を事後的に求めるのではなく,ノンパラメトリックベイズモデルに基づいてFIRフィルタの各タップのアクティベーションに対する事前分布を導入することで次数と係数を同時に推定するアルゴリズムを導出した.これらの取り組みにおいて提案した手法は,実環境に近い条件下でのシミュレーションで従来の正規分布に基づく手法などと比較して高い推定性能を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優ガウス性の分布に基づくシステム同定について計画通りの成果を上げることができた.また,この課題に加えて,本年度は複素ラプラス分布に基づく非負値行列因子分解を前倒しして実施しており,雑音除去のタスクに対する性能を検証中である.現在,正弦波のパラメータ推定のためのベイズモデルにおける課題を保留している.しかし,これは他の研究課題との優先順位を考慮した上での判断であり,研究の進捗状況に影響はないと考える.
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今後の研究の推進方策 |
まず,複素ラプラス分布に基づく非負値行列因子分解について検証を進め,国際会議での発表を目指す.さらに,この課題から得られた知見をもとにブラインド信号分離のための数理モデルとアルゴリズムを構築する.正弦波のパラメータ推定においては,当初想定したモデルが簡単な形の数式で記述できないことが本年度の調査で判明した.そのため,当初の想定と等価なモデルへの書き換え試み,最適化アルゴリズムを導出できる数理モデルを模索する.
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