研究課題
本年度の計画は,(1)複素ラプラス分布に基づく非負値行列因子分解(NMF)および(2)ベイズモデルに基づく正弦波の統計モデルに関する研究に取り組むことであった.(1)に関し,複素ラプラス分布に基づくNMF(Laplace-NMF)の昨年度の研究成果は信号処理分野のトップ国際会議に採択され,9月にポスター発表をした.Laplace-NMFは時間周波数領域上でラプラス分布に従う雑音の除去で性能がわずかに改善することを示したが,ブラインド信号分離(BSS)における性能や他のNMFの統計モデルとの関連が明らかではなかった.そこで,本年度は複素ラプラス分布の一般化である複素ベッセル分布を用いてNMFを定式化した.さらに,この分布を用いて多チャンネルNMFを定式化し,BSSに適用した.この研究成果はAPSIPA ASCに採択され,11月に口頭発表を行った.NMFの統計モデルの一般化は,どんな分布が信号分離や音源強調に適しているかを知るために非常に重要である.これまで,ベッセル関数により定義されるラプラス分布に基づくNMFの一般化は明らかではなかった.この研究では,複素ベッセル分布と呼ばれる複素ラプラス分布および複素正規分布を含む一般化を用いてNMFの定式化を行った.さらに,BSSにおける性能評価を通じて,提案法のハイパーパラメータの設定により分離性能がどのように変化するか検証した.(2)については,正弦波の周波数が周期変数として取り扱えることに着目し,周期変数に対する事前分布の導出を試みた.しかし,この問題における周期変数を扱うには,周期変数の取る値に応じて多数の場合分けを要し,事前分布の連続性や尤度関数との共役性を担保できなかった.そのため,最適化アルゴリズムの導出には至っていない.しかし,本年度は(1)において十分に大きな成果を得られたため,本研究課題の意義は損なわれないと考える.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems
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