本研究では、急性肺障害におけるリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素(L-PGDS)の役割とその機構の検討を目的として、研究を行った。L-PGDSはプロスタグランジンD2(PGD2)を産生する(賛成活性中心:C65)だけでなく、βバレル構造を持つことで疎水性低分子を運搬する作用も持つ。今回は塩酸投与による急性肺障害モデルを作成し、野生型マウスとL-PGDSの遺伝子欠損マウス、L-PGDSのPGD2産生活性中心を点変異マウスで比較した。
野生型マウスへの塩酸投与は、肺出血と呼吸機能低下を引き起こす。L-PGDSの遺伝子欠損、もしくPGD2産生活性中心の遺伝的点変異はこれらの症状を悪化させた。この悪化は、L-PGDS遺伝子欠損群で顕著だった。さらに、L-PGDSはPGD2の産生活性を介さずにムチン産生と好中球浸潤を抑制した。
以上の研究により、L-PGDSは急性肺障害を改善することが明らかになった。その中で、L-PGDSはPGD2産生を介して浮腫形成を抑制するとともに、PGD2産生を介さずにムチン産生や好中球浸潤を抑制することが明らかになった。 本研究では、急性肺障害におけるL-PGDSの役割とその機構の検討を目的として、研究を行った。
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