研究課題
リボヌクレアーゼH2(RNase H2)は、RNA/DNA中のRNA鎖だけでなく、1個のリボヌクレオチド(R)が埋め込まれた二本鎖DNA中のRの5’側を切断する。ヒトRNase H2はA、B、Cサブユニットから成る三量体である。近年、RがヒトゲノムDNAに数千塩基対に1塩基の割合で存在し、RNase H2がこれの除去に関与していることが明らかになった。また、ヒトRNase H2の遺伝性変異が神経疾患エカルディーグティエール症候群(AGS)の原因であることが報告された。AGS患者で同定された遺伝性変異を有する6種類の変異型酵素(A-G37S(AサブユニットのGly37がSerに置換された変異体)、A-N212I、A-R291H、B-A177T、B-V185G、C-R69W)の活性と安定性を解析した。A-G37Sの活性は野生型酵素(WT)の1%以下、他の変異体の活性はWTの51%から120%であった。222 nmの楕円率を指標とした変異体の融解温度は50℃から53℃で、WT(56℃)よりも低かった。これらのことから、A-G37Sは活性と安定性がともにWTよりも低く、他の変異体は安定性がWTよりも低いことが示唆された。ヒトRNase H2のVal143の役割を解析した。Val143を他のアミノ酸残基に置換した19種類の変異体のうち、V143CとV143Mを除く17種類で精製酵素が得られた。1塩基のRを含む18塩基DNAとこれに相補的な18塩基DNAから成る二本鎖DNA切断活性は、WTを100%とすると、変異体は0.05%から130%であった。RNA/DNAハイブリッド切断活性は、WTを100%とすると、変異体は0.02%から42%であった。以上の結果から、ヒトRNase H2のVal143は触媒活性と基質特異性に必須ではないものの重要な役割を担うことが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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