研究課題/領域番号 |
18J14341
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
村田 暁紀 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 大規模環境 / 進化計算 / 航空機着陸順最適化 |
研究実績の概要 |
本研究では空港周辺の航空機が連続的に着陸する過密状況における,安全で効率的な航空管制システムの構築を目指し,(1)混雑度合いに応じたスケーラビリティ最適化(適応性の向上),(2)悪天候状況下におけるロバスト性の向上,(3)航空管制官の認知的負荷低減に向けたシステムと人との協調型最適化という3つのテーマに取り組む. 平成30年度においては,空港への着陸順が連続する状況下での(1)最適化性能の向上と②悪天候時のロバスト性の向上を実現するべく,(1)-(i)大規模環境にも適用可能な手法,(1)-(ii)着陸順の早期発見及び性能向上のための最適化手法,(2)-(i)悪天候時のロバスト性向上のための多目的最適化手法の課題に取り取り組み,(1)-(i)では,従来手法において1機,平均20秒生じていた遅延を解消,(1)-(ii)では航空機同士の衝突が発生する状況の解消,(2)-(i)ではロバスト性向上のためのパラメータ最適化手法.パラメータに依存せず,安定的な最適化性能を維持することが可能になった.これらの研究成果は(1)-(i)International Conference for Research in Air Transportation 2018(ICRAT2018)において研究成果を発表した.他にも,国内学会としてインテリジェント・システム・シンポジウム口頭発表した.また.この成果をまとめ,SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration へと論文掲載された.(1)-(ii)の成果は計測自動制御学会,システム・情報部門学術講演会2018,において本研究を発表しており,対外発表を積極的に行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は初年度の研究計画である,(1),(2)に取り組んだ.以下に研究の実施状況について述べる. (1)着陸順最適化性能向上と高速化のためのアルゴリズムの考案 初年度の研究計画では,多くの航空機が連続して着陸する超過密状態における着陸順最適化手法において,実行可能な着陸順を獲得の困難な問題,及び最適化性能の低下に対する問題に取り組む.具体的には,(i)大規模環境にも適用可能な手法においては,空港における交通流が増えた時,探索空間が増加するため,最適性が低下するという問題に対し,全航空機を適切な航空機数に分割し,分割した航空機群を並列化し最適化する手法を提案した.結果として,従来手法において1機あたり,平均20秒程度の遅延が解消され,最適化性能の精度向上が見られた.(ii)着陸順の早期発見及び性能向上のための最適化手法は航空機同士の間隔を維持した着陸順を発見することが困難である,混雑時の環境において,航空機間隔が小さく,実行可能解として悪影響を及ぼす航空機を修正する手法を提案した.これにより従来手法では乱数に依存するため,乱数には間隔が満たされない実行不可能な着陸順のみ獲得してしまうが,提案手法では乱数に依存せず着陸順を獲得できることが明らかとなった. (2)環境悪化における着陸順のロバスト性の向上 悪天候,超過密状態の状況下において着陸のスケジュール遅延が発生する問題に対し(iii)スケジュール遅延にロバストな着陸順最適化というサブテーマを設定し,上記(i)で説明した,遅延を考慮した複数の着陸順の候補解集合を獲得する手法を提案した.これにより,遅延の発生が起こる場合にも柔軟に対応可能なスケジューリングが獲得できることが明らかになった.以上のことから進捗上,おおむね計画通り進行している.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度では,研究計画として掲げた3つのテーマの内,1つを実現し,大規模環境に適用可能なアルゴリズムを提案した.また2つ目のテーマである,ロバスト性向上のための航空機の遅延と航空機間の間隔のトレードオフ関係を持つ解生成に成功した.来年度は最終年度であるため,テーマ2の適用範囲の拡張,テーマ3の航空管制官の認知的負荷低減に向けたシステムと人との協調型最適化に取り組む, 具体的に,テーマ2においては,昨年度は全航空機を対象にトレードオフを考慮した解集団を生成したものをテーマ1で提案したアルゴリズム上での実現を目指す.ただし,これをテーマ1で提案した手法に基づいて生成する場合には,全航空機を分割し,分割した解を合成して一つの解を生成するため,複数解の生成が困難である.この問題を解決するため,分割した航空機の群の候補を今までは一つのみ候補解を生成したいたものを,分割した航空機の集団の最適化アルゴリズムに多目的最適化アルゴリズムを採用することで複数の解候補を生成し,この組み合わせにより全体の航空機の複数解を生成手法を考案する予定である. テーマ3においては航空管制官に選択肢を提示可能な有望複数解候補の生成手法を考案予定である.テーマ2のフレームワークは複数解の提示するに留まり,その最適解の性能の低下を誘引する.有望な選択肢を生成するためには分割された候補解の中で有望な候補解を高く評価しそれを保持しておくが重要となる.そこで,この評価を航空機同士の間隔の大きさと,航空機のスケジュール遅延の2つのトレードオフ関係に関する評価の重み付けをすることで有望な選択肢の評価を高め,これをアーカイブすることによって問題解決を図る.
|