研究課題
マルチフェロイクス固有の磁気共鳴「エレクトロマグノン」の巨大テラヘルツ応答を用いた研究を進めた。マイクロ波領域の強磁性共鳴と比べエレクトロマグノンは100倍以上の強い振動子強度を持つことから、テラヘルツ帯での新しい電気磁気光学現象の開拓を目指し研究を行った。このエレクトロマグノンを高強度テラヘルツ光用いて強励起することで非線形領域の新現象へ挑戦した。エレクトロマグノンがピコ秒領域の周波数を持つことを考えると、超高速コヒーレント物性制御に直接つながる研究であると考えている。マルチフェロイクスにおけるらせん秩序由来の強誘電性は、外部刺激に対し大きな応答を示すという特徴があり、エレクトロマグノンを用いることでテラヘルツ光により効果的に強誘電性を刺激できると考えた。まずエレクトロマグノンを強励起するために、高強度化したテラヘルツ光を発生させる新しい光学系を立ち上げ、最大で800 kV/cmの電場強度を持つテラヘルツ光の発生に成功した。この高強度テラヘルツ光を研究対象物質であるY型ヘキサフェライトに照射したところ、強誘電分極を第二次高調波発生によって観測することに成功した。第二次高調波の温度依存性から、エレクトロマグノンの寄与による強誘電分極がテラヘルツ光によって発生していることをつきとめた。また第二次高調波のテラヘルツ光の電場強度依存性から、非線形な効果が起きている可能性が考えられることがわかった。より詳しく調べるためテラヘルツ誘起の線形分極を計算によって求め、得られた実験結果と比較したところ、計算で見積もった線形分極に比べて大きな変化が起きていることが分かった。今後の展望としては非線形現象の寄与をより詳細に検証し、エレクトロマグノン共鳴とテラヘルツ光誘起の振動分極信号の相関の解明が期待される。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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