本研究は、空腹時に胃から下部小腸へと約100分周期で伝播する伝播性空腹期収縮(Migrating Motor Contraction; MMC)がどのように制御されるか明らかにすることを目的としており、そのために平成31年度は昨年度に引き続き、MMCの強収縮を引き起こすモチリンの転写・分泌制御機構についてスンクス小腸オルガノイドを用いて検討した。これまで、モチリンはげっ歯類では偽遺伝子化していることから研究が進んでおらず、本研究ではモチリンを産生する小型実験動物であるスンクスを用いている。これまで、スンクスで初めて小腸からオルガノイドを作製することに成功し、また安定して長期間培養することにも成功した。 今年度は、モチリン産生株化細胞をスンクス小腸オルガノイドから作出するために、IRES-T antigen遺伝子をモチリン遺伝子下流にノックインすることを目的とした。IRES-T antigenを含むベクターコンストラクトを作製し、Cas9、guideRNAとともにスンクス小腸オルガノイドへトランスフェクションした。トランスフェクションしたベクター由来の蛍光タンパク質は確認できているが、未だモチリン遺伝子へのノックインは成功していない。 それに加えて、蛍光レポーターであるtdTomato遺伝子をモチリン遺伝子下流にノックインするため、tdTomato遺伝子及びネオマイシン耐性遺伝子を含むベクターを作製し、guideRNA、Cas9とともにスンクス小腸オルガノイドへトランスフェクションすることも試みた。ベクターの作製は終了したが、トランスフェクションは成功していない。
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