本研究者が開拓してきたコアシェル型共集積カラムナー液晶は、棒状液晶分子を媒体として円盤状モノマーが超分子重合することによって、超分子ポリマーからなるコアを棒状液晶分子のシェルが取り囲んだ階層構造を有する(K. Yano et al. Science 2019)。 本液晶材料のさらなる機能化を目指し、当該年度では円盤状コアの側鎖末端に安定有機ラジカルを有するモノマーを用いた。本モノマーの超分子重合を棒状液晶媒体中にて検討すると、モル比1対3混合物がヘキサゴナル格子を有する共集積カラムナー相を発現することを見出した。各種分光測定により、このコアシェル型カラムが水素結合によって保たれ、そのらせん情報が周縁部の有機ラジカル部位にまで伝搬していることが明らかとなった。また磁気測定により、カラムナー液晶材料が常磁性を有し、有機ラジカル間にスピンースピン交換相互作用が存在することが示唆された。興味深いことに、この共集積カラムナー液晶は直流電場に応答して平行配向するだけでなく、磁場印加によって垂直配向を示すことを見出した。このように電場でも磁場でも配向可能なカラムナー液晶材料はこれまでに例がない。
上記の研究経験を基に、ミシガン大学・Kotov教授の指導の下、無機ナノ粒子の自己集合化に取り組んだ。当該研究室が最近報告したキラル磁性ナノ粒子は、磁場印加により光学密度が40%減少する「磁場誘起透明性」を示す。この磁性ナノ粒子を用い、種々のアルカリ土類金属イオンと混合しpHを調整することで、走査型電子顕微鏡下で幅数百ナノメートルのプレート状構造体が観察され、さらにこれらが集合化した直径数マイクロメートルの球状集合体も確認された。磁性ナノ粒子と同様に、この集合体も磁気光学応答性を示し、興味深いことに、その光学密度の変化量は濃度の増大に伴い最大70%にまで大きくなることを見出した。
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