研究実績の概要 |
本研究の目的は、心の理論課題遂行中の神経基盤の文化的多様性を検討することである。具体的には、日本の子どもと成人の心の理論(他者の心的状態を推測する能力)課題遂行中の脳波を測定し、先行研究のアメリカの子どもと成人のデータ比較し、文化心理学的分析を行う。2018年度は、以下のことを行った。 (1)実験開始前の資料収集と課題同定 実験開始前に、心の理論実験、心の理論の脳波実験、心の理論の脳波以外の脳科学的手法の実験などに関連する文献、資料を確認し、課題を同定した。 これまで、心の理論の有無を測定するには、誤信念課題のみでなく、信念課題や欲求課題といった複数の心的状態に関する課題を用いての分析が行われてきている。行動課題だけでなく、脳波を測定する場合においても、信念課題と欲求課題の処理の違いが、事象関連電位(Event-related potential: ERP)の反応に反映されることは、これまでの研究(Bowman et al., 2012; Liu et al., 2009)で明らかになっている。このような傾向は、日本の子どもや成人においても見出されるのか、また、その様相は、先行研究のアメリカの子どもや成人とは異なるのかを検討するために、本研究においても信念課題と欲求課題の2つの心的状態課題を用いることとした。 (2)実験開始のための資料収集 まず、脳波測定に適した実験室の環境作り、および脳波測定に必要な備品をそろえた。これらの作業と並行し、日本の成人用の心の理論の実験課題の作成、質問紙の作成を行った。課題作成後、東京女子大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」に申請し、研究実施の承諾を得た。実験実施の最終調整を行い、パイロット実験を開始した。
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