研究課題/領域番号 |
18J14457
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原 裕太 京都大学, 地球環境学舎, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 環境負荷 / 住民生活 / 農業生産活動 / 土地利用 / 退耕還林 / 黄土高原 / 半乾燥地 / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
本調査研究は,砂漠化対策として農地の緑地化と残存農地での農業生産構造の転換(1999年~)が進められてきた中国・黄土高原農村において,現地調査および種々のデータ解析を行い,政策実施後の農村環境,農業的土地利用の持続可能性を多角的に検証し,今後の最適化のあり方を検討するものである。 その評価軸である,①村・世帯間の経済格差や貧困問題と地形,立地条件との関係,②食糧生産の外部依存の進行に伴う食糧供給上のリスク,および既存評価法の課題点について,主要対象地の一つである陝西省呉起県でのこれまでの成果を,国内商業誌に総説として寄稿した(2018年7月)。③農業に係る化学的環境負荷の面では,黄河中流域での水質,土壌汚染が深刻化している。これを踏まえて,1996~2009年の陝西省北部一帯を対象に,重回帰モデルを用いて,化学肥料と農薬の使用量の増加,地域差に強く影響している因子(作物,家畜)を分析した。加えて,植物栄養学の観測値と政府統計情報から,地域全体の施肥水準の妥当性を検討し,国内学術誌1報(2018年10月)にまとめた。また,1920年代末(民国期)以降の各種調査資料,統計資料をとりまとめ,①~③に係る各作物の生産状況とその変遷を,空間的かつ時系列に検証し,国際会議1報(2018年6月)にまとめた。 加えて,現地学術研究機関(西北農林科技大学)の研究セミナーで招待講演を行い,現地の研究者と情報を共有するなど,研究成果の社会還元も鋭意実施した(2019年3月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね必要なデータを予定通り着実に収集し,解析結果を順次報告している。成果の一部は原著論文や国内外の学会で公表しており,おおむね順調に進展していると判断できる。とくに主要対象地の一つである陝西省呉起県では,これまでの調査,分析によって,植林政策後の農業生産活動による,化学的環境負荷,住民生活,食糧供給への影響,課題点がそれぞれ明確化できた。 また,現地の学術研究機関(西北農林科技大学)にて研究セミナーを開催し,研究成果の現地還元を行った点でも評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は現地調査を更にすすめるとともに,成果発表により力をいれていく予定である。生活構造と土地利用との関係性や,植林地の生態評価について,さらなる一般化と具体的な最適化案の明示に向けて,現地調査および統計情報,衛星画像等の時空間の解析を進める。種々の自然環境,社会環境への影響診断を踏まえ,現代の半乾燥地農村社会,黄土高原における持続可能な土地利用計画・地域振興策のあり方,改善点を議論する。社会還元にも取り組み,現地のステークホルダー(研究者,地方政府,住民等)とも協働し,持続的な農村開発に向けた活動を展開する。
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