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2018 年度 実績報告書

ラン藻由来の炭化水素合成関連酵素の高活性化とバイオ燃料生産への応用

研究課題

研究課題/領域番号 18J14539
研究機関東京大学

研究代表者

工藤 恒  東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードラン藻 / バイオ燃料 / 炭化水素 / 酵素 / タンパク質工学
研究実績の概要

ラン藻は軽油に相当する炭化水素を合成できるが、この合成反応にはアシルACP還元酵素(AAR)とアルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼ(ADO)という2つの酵素が関与する。しかしAARとADOの活性は低いため、バイオ燃料生産への応用には両酵素の高活性化が必要不可欠である。またAARは立体構造が未知であり、機能発現に重要なアミノ酸残基の詳細が未解明であった。そこで本研究では、活性向上に重要なアミノ酸残基の同定を目指した。
以前、代表的な12種類のAARの活性を比較し、低活性型AAR(7336AAR)と高活性型AAR(7942AAR)を見出した。この結果を参考にして、AARの活性向上に重要なアミノ酸残基を同定するために、7336AARの変異解析を行った。具体的には7336AARのアミノ酸配列を7942AARのアミノ酸配列に近づけるような一アミノ酸置換変異体を40個作製し、活性などを測定した。その結果炭化水素生産性が増大した変異体が得られ、特に6つのアミノ酸変異が炭化水素生産量を向上させる上で重要であることが分かった。このうち、L20R、S200Eでは酵素活性が向上した一方、N13Q, V60I、K110D、S298Aでは可溶性発現量が向上することで炭化水素生産量が増加することが分かった。またAAR変異体の特性間での相関解析より、炭化水素生産性の増加には活性と可溶性発現量両方の向上が重要であることが分かった。そこで上記6つのアミノ酸変異を組み合わせた多重変異体を作製したところ、炭化水素生産性を大幅に向上した変異体を創出できた。
本研究で得られた高活性化AAR変異体はラン藻を用いたバイオ燃料生産に応用可能である。ラン藻では光合成を利用して大気中の二酸化炭素を原料に炭化水素生産でき、地球温暖化防止につながるため、地球環境にやさしいクリーンなエネルギーの創製に貢献できると期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は高活性化AAR変異体を創出するため、AARの活性向上に重要なアミノ酸残基の同定を目指した。低活性型である7336AAR一アミノ酸置換変異体40個を作製し、活性などを測定した。その結果炭化水素生産性が増大した変異体が得られ、炭化水素生産量を向上させる上で重要な6つのアミノ酸部位を同定することができた。そのうち2つのアミノ酸部位(Leu20, Ser200)では活性向上、残りの4つのアミノ酸部位(Asn13, Val60, Lys110, Ser298)では可溶性発現量向上にそれぞれ重要であることを明らかにした。さらに炭化水素生産量が向上したアミノ酸変異を組み合わせたところ、炭化水素生産性を大幅に向上した変異体を創出できた。以上の成果から、目的としていたAARの活性向上に重要なアミノ酸残基を同定でき、さらに多重変異導入によってさらなるAARの高活性化についても達成していることから研究は順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

多重変異導入によるAAR変異体のさらなる高活性化を進めていく。またAARの下流の反応を担うADOについても高活性化を行う。そのためAARと同様の方法で、まずさまざまなラン藻由来ADOの活性を比較し、さらに変異解析から活性向上に重要なアミノ酸残基の同定を行っていく。そして、AAR、ADO高活性化変異体を創出する。
本研究におけるAAR、ADOの活性測定はすべて大腸菌内で行われている。そこで、創出されたAAR、ADO高活性化変異体をラン藻内に導入、発現させることによって、ラン藻での炭化水素生産量の向上を成し遂げていく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Production and characterization of recombinant P1 adhesin essential for adhesion, gliding, and antigenic variation in the human pathogenic bacterium, Mycoplasma pneumoniae2019

    • 著者名/発表者名
      Kenri Tsuyoshi、Kawakita Yoshito、Kudo Hisashi、Matsumoto U.、Mori Shigetarou、Furukawa Yukio、Tahara Yuhei O.、Shibayama Keigo、Hayashi Yuuki、Arai Munehito、Miyata Makoto
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 508 ページ: 1050~1055

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2018.11.132

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cyanobacterial Enzymes for Bioalkane Production2018

    • 著者名/発表者名
      Arai Munehito、Hayashi Yuuki、Kudo Hisashi
    • 雑誌名

      Adv Exp Med Biol

      巻: 1080 ページ: 119~154

    • DOI

      10.1007/978-981-13-0854-3_6

  • [学会発表] ラン藻由来アルカン合成関連酵素の活性向上に重要なアミノ酸残基の同定2019

    • 著者名/発表者名
      工藤恒、林勇樹、新井宗仁
    • 学会等名
      第8回日本生物物理学会関東支部会
  • [学会発表] Identification of amino acid residues essential for hydrocarbon production in aldehyde deformylating oxygenase from cyanobacteria2018

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Kudo, Yuuki Hayashi, Munehito Arai
    • 学会等名
      第56回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] 変異解析によるラン藻由来アルカン合成関連酵素の機能発現に重要な部位の同定2018

    • 著者名/発表者名
      工藤恒、林勇樹、新井宗仁
    • 学会等名
      第70回日本生物工学会大会
  • [学会発表] ラン藻由来アルカン合成関連酵素群の活性に重要なアミノ酸部位の同定2018

    • 著者名/発表者名
      工藤恒
    • 学会等名
      ラン藻ゲノム交流会2018
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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