ラン藻の炭化水素生産にはアシルACP還元酵素(AAR)とアルデヒド脱ホルミル化オキシゲナーゼ(ADO)の2つの酵素が関与している。酵素AAR、ADOは微生物の炭化水素生産における鍵となる酵素であるが活性が低い。このため、バイオ燃料生産への応用には両酵素の高活性化が必要不可欠である。 酵素AARについては、前年度にて低活性型AARの変異解析より、6つのアミノ酸変異が炭化水素生産量を大きく増加させることを見出した。そこで、これら6つの変異を組み合わせた多重変異導入を行ったところ、野生型に比べて炭化水素合成量が最大60倍以上増加した高機能化AAR変異体を創出でき、既存の高活性型AARでの炭化水素生産量と同等以上であった。これらAARに関する研究を論文として発表できた(1報目)。 酵素ADOについては、10種類のラン藻由来ADOについて活性を比較し、高活性型ADO(7942ADO)と低活性型ADO(7421ADO)を見出した。次に、7942ADOのアミノ酸配列に7421ADOのアミノ酸配列を近づけるような一アミノ酸置換変異を行った。7421ADO一アミノ酸置換変異体を40個作製し活性測定を行った結果、酵素活性を向上させることができた。さらに可溶性発現量も増大した変異体が得られた。得られた高活性化ADO変異体は高機能化AARと同様に炭化水素の大量生産に大きく貢献しうる。これらADOに関する研究を論文として発表できた(2報目)。 本研究で得られた高機能化AAR、ADOなどをラン藻内で発現させることによって、ラン藻での炭化水素生産量を大きく向上させることに成功した。以上の成果より、本研究で創出された高機能化AAR、ADOはラン藻でのバイオ燃料生産の実用化に大きく貢献できると期待される。
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