研究課題/領域番号 |
18J14592
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
BAK JUNHWI 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 電気推進 / プラズマ計測 / 放電振動 / ホールスラスタ |
研究実績の概要 |
本研究では、円筒型構造を持つ電気推進機ホールスラスタの放電領域において、一般に一様と仮定される周方向次元に起こりえる非一様性に着目し、周方向プラズマ諸量が推進機放電電流振動に与える影響を調べる.
・人工的に非一様に与えた推進剤により周方向に自己誘導されるプラズマ計測のため3軸プローブ測定系を構築した。静電プローブにより、軸-円周面2次元上でのプラズマ計測を行った.プラズマ電位・密度・電子温度の構造を明らかにし、軸方向-周方向における電離領域が空間的非一様に分布しているのが分かった.その空間スケールはインプットの中性粒子の空間スケールに沿っているのが分かった.また、計測したプラズマ構造からホールスラスタにおける磁場を横切る電子電流密度項の評価を行うことができ、電子輸送における構造の影響も実験的に評価することができた.
・従来提案されていた電離振動モデルに、測定から観測されたような物理諸量の周方向非一様性を新たに考慮し、モデルの改良を行った.その際、推進機作動におけるインプットパラメーターだけで評価できる電離振動モデルを立てるほか、従来モデルで評価できる電離振動の周波数と電離振動の振幅が中性粒子の速度により結びつかられていることに着目し、モデルから放電振動の振幅が評価できるようになった.改良モデルより実験で観測された電離振動挙動が定性的に再現できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記述した通り,今まで観測例がなかった周方向で非一様なプラズマ諸量の測定に成功し、推進機の放電振動に強く関係があるプラズマ物理諸量の詳細な分布を分かることができた.プラズマ物理諸量の空間的非一様な分布から,電離に強く関係がある推進剤の枯渇・補充が周方向次元において同時に起こりえないことが示唆されたのは、電離振動現象を理解するにおいて大事な発見だと判断する.従来モデルに周方向非一様性を考慮し、概ね実験で観測された電離振動挙動が再現できたものの,まだ幾何学的な特徴まで考慮はされておらず、よりモデルを改良する余地がある.以上の観点から,「おおむね順調に進展している」と自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
・当初予想していた周方向の非一様な分布に加え、軸方向にも非一様が生じることが分かり、その影響を考慮した電離振動モデルへの改良を行う。 ・周方向幾何学的な特徴を考慮し、周方向次元における幾何学的絶対長さが推進機の放電へ与える影響を解明する。 ・実験的に得られたプラズマ物理諸量の分布に基づき、推進機放電領域での電離特性を評価するほか、改良電離モデルを利用し、放電安定手法を構築していく。
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