研究最終年度である2019年度の研究の詳細については以下の通り。 (A)前年度より継続しているアプローチ、論理学と規範性の関係についてさらに探求し、8th Wiener Forum fur Analytische Philosophie Graduate Conference on the Normativity of Logicおよび11th BESETO Conference of Philosophyにおいて研究発表を行い、フィードバックを得た。これらの成果は、論文としては、『哲学雑誌』にて「認識論と論理の規範性」として発表された。近年論理哲学において、論理の規範性についての懐疑的な見解が提出されている。以上の研究は、論理の規範性について、認識論的なアプローチを試みることによって、具体的には、認識閉包からある条件のもとで論理の規範性に関するテーゼを導き出すことによって、これを擁護せんとするものである。規範性の観点から様相の分析にアプローチの精緻化としてこれらの研究は位置づけられる。 (B)論文として発表された「道徳についての選択的虚構主義」も同様に、規範性の分析として、本研究のアプローチの基礎部分に当たる。 (C)『デイヴィッド・ルイスの哲学』として、様相哲学の最も重要な哲学者、デイヴィッド・ルイスの哲学の整理を行った。以上の研究成果から示唆されるのは、論理学による思考の規範性というものはいまだ有望なアプローチであり、残るは様相と規範性の接続がどのように行われているかということを精緻化することである。このアプローチについては、今後も発展的に継続していく。
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