研究課題/領域番号 |
18J14647
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
JIN BYUNGSEOK 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 小胞体ストレス / 小胞体ストレス応答機構 / アポトーシス / メダカ / meigo / アポトーシス可視化 |
研究実績の概要 |
本研究は細胞内の小胞体ストレス応答機構において小胞体ストレスに起因するアポトーシスの分子メカニズムを明らかにすることを目標とする。細胞を用いたin vitroレベルでの実験系は薬剤を処理し小胞体ストレスを引き起こすが、その場合細胞内の様々な経路が同時に誘導されるため解析が混乱である。この問題点を解決するため生理的に生じる小胞体ストレスに着目しメダカをモデル動物として用いたin vivoレベルでの解析にアプローチし研究を行なっている。 現在メダカの発生段階に生じる生理的小胞体ストレスとアポトーシスの誘導、また持続的小胞体ストレスにより異常な表現型が生じるメダカであるmeigo遺伝子欠損メダカを用いて小胞体ストレス応答機構の誘導とそれに起因するアポトーシスの関係性を調べている。今年度はアポトーシスの可視化のため4種類の蛍光タンパク質それぞれを用いたアポトーシス可視化メダカを作出し、発生段階で生じる生理的アポトーシスの観察に成功した。次にmeigo遺伝子欠損メダカと掛け合わせ異常な表現型におけるアポトーシスの誘導の観察を行った。その結果、レンズや心臓など組織特異的にアポトーシスが誘導されることが観察され、さらに小胞体ストレス応答機構の誘導も組織特異的に異なることがわかった。また小胞体ストレス応答機構の中アポトーシスの誘導に関与していると考えられているPERK経路が欠損されたメダカと掛け合わせを行い解析した。その結果、PERKとmeigoのダブルノックアウトの場合、より強いアポトーシスの誘導と重篤な表現型が観察され、PERKが直接アポトーシスの誘導と表現型に関与している可能性は低いと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で重要である発生段階におけるアポトーシスのライブイメージングに成功し、研究は予定通り進んでいると考えられる。また、持続的小胞体ストレスが誘導されるmeigo遺伝子欠損メダカにおいて小胞体ストレス応答機構の回復経路であるXBP1(S)を過剰発現させた結果、全身のアポトーシスの誘導が減少し、さらに心臓の異常な表現型も回復する結果が得られた。この回復実験結果によりmeigo遺伝子欠損メダカにおいて持続的小胞体ストレスがアポトーシスの誘導と異常な表現型に関与していることが強く示唆された。これらの結果から今年度本研究は順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
①小胞体ストレス応答機構からアポトーシスにつながる他の経路や因子(IRE1, CHOP)の欠損メダカとmeigo遺伝子欠損メダカと掛け合わせアポトーシスと表現型解析を行う。 ②アポトーシスと小胞体ストレスを同時に可視化できるメダカを作出し観察を行う。 ③アポトーシスの下流因子であるCaspase3の欠損メダカを作出し、小胞体ストレスに起因するアポトーシスの解析を行う。 ④meigo遺伝子欠損メダカから培養細胞を樹立し、meigoの欠損による小胞体ストレス誘導の原因をタンパク質レベルで調べる。
|