リポソームとは,リン脂質二重膜から構成される生体由来の構造体であり,内部に独立した水相を有するために薬物キャリアとして注目されている.一方で,その製造法において大量の有機溶媒が使用されることが課題となっている.本研究では,超臨界二酸化炭素を主要媒として利用した新規フロープロセスにより,リポソームの連続製造を試みた.特に,マイクロミキサーおよびスラグ流という,フロープロセス特有の技術を利用することにより,既往の手法よりも効率的なリポソーム製造を目指した. 提案したプロセスは,超臨界二酸化炭素へのレシチンの溶解,マイクロミキサー内によるwater in CO2エマルションの作製,スラグ流内でのリポソームの作製の3段階から構成される.装置内の耐圧可視セル内でレシチンの溶解とエマルションの作製を確認し,電子顕微鏡による形状観察でリポソームの形成が確認された. 本研究では,リポソームの性質制御を念頭に,リポソームサイズの制御にも取り組んだ.レシチンを溶解させる際に用いる共溶媒として,酢酸エチルおよびエタノールを利用し,これの流量を変化させることでリポソーム形成に与える影響を評価した.結果,エタノールを加えた際には,超臨界二酸化炭素相内の流体粘度が変化し,混合状態が穏やかになることで,大きなリポソームが形成されることが明らかとなった.この際,同様の効果により,薬物がリポソームに内包された割合を示すカプセル化効率も,80 %程度と既往の研究と比較して高い値を記録した. 以上から,本研究では,超臨界二酸化炭素を用いた新規フロープロセスを提案することで,性質制御が可能な効率的なリポソーム製造の提案に成功した.
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