研究課題
本研究は高反射率光共振器と中赤外レーザーの高効率カップリングにより、天然同位体比レベルに迫るアバンダンス感度と高いスループットを同時に有する、より簡便なレーザー吸収分光に基づくC-14分析法を開発し、実試料分析の実証を行うことで生体・環境トレーサーにおける極微量C-14定量分析への有用性を明らかにすることを目的とする。第1年度(平成30年度)は、特にPound-Drever-Hall(PDH)法を用いた中赤外半導体レーザーの周波数安定化に取り組んだ。光共振器からの反射により、共振器から漏れ出てくる微弱な中赤外光を光検出器により検出し、周波数ロックのための明瞭なエラー信号を取得することができた。PIDサーボを用いて、エラー信号が一定となるように半導体レーザーに変調を加えることでレーザー発振周波数を光共振器の共鳴条件にロックすることを試みた結果、短期的ではあるもののレーザー周波数が安定に保たれたことを確認した。PDH法により安定化された中赤外半導体レーザーの発振周波数は、数分というスケールでゆっくりとドリフトしていることが判明したが、測定時間に対して、その変動の時間スケールは十分大きく、C-14測定に影響はないと判断した。安定化パラメータ等の最適化のため、当初の計画に対し若干の遅れが生じたものの、PDH法によって、周波数安定化の効果を確認できた。また、生体・環境トレーサー応用における実試料分析の実証に向けた準備を行った。具体的には、植物生理学にける炭素動態評価への適用実証を計画している。そこで、実証実験に向けた準備として、C-14を含む二酸化炭素ガスを光合成により植物試料に吸収させ、植物試料中C-14量を分析するための試料導入系を構築した。
2: おおむね順調に進展している
第1年度(平成30年度)は、中赤外半導体レーザーの周波数を、PDH法により安定化する計画であった。PDH法による安定化の効果は認められたが、その安定性は、C-14分析には依然不十分であったため、安定化条件の最適化検討に時間を要し、当初の計画に対して、若干の遅れ(4か月)が生じた。そのため、本研究を翌年度に繰り越し、継続して取り組んだことで、C-14分析に十分なレベルまで周波数を安定化することができた。従って、本研究は順調に進展していると判断した。
第2年度(令和1年度)は第1年度の結果を受けて、植物生理学における炭素動態評価に本手法を適用する基礎実験により、開発したシステムのC-14トレーサー分析への適用検討を行う計画である。第1年度の研究に4か月の遅延が発生したものの、第1年度に基礎実験の準備を並行して行えたため、当初の計画を変更することなく研究遂行が可能であると考える。
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JPS conference proceedings
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