研究課題
本研究は高反射率光共振器と中赤外レーザーの高効率カップリングにより、天然同位体比レベルに迫るアバンダンス感度と高いスループットを同時に有する、より簡便なレーザー吸収分光に基づくC-14分析法を開発し、実試料分析の実証を行うことで生体・環境トレーサーにおけるC-14定量分析への有用性を明らかにすることを目的とする。採用第2年度は前年度の結果を受けて植物生理学にける炭素動態評価に本手法を適用する基礎実験を行った。植物生理学にける炭素動態評価への適用実証として、特に、植物生理学におけるイネなどの作物の乾燥ストレス応答に関する研究に注目した。乾燥ストレス下で栽培された作物は、通常の環境で栽培された作物と比較して、根の成長に大きな差異があることが分かっており、光合成産物の動態に差異が生じることが示唆されている。本研究では、生命農学分野の研究者の協力を得て、C-14を含む二酸化炭素ガスを充満させたチャンバー内に乾燥ストレス有/無で栽培したイネ試料を導入し、光合成により葉から吸収させることでC-14標識を行った。標識後一定時間経過ごとに生体活動を停止させ、地上部と茎葉部に分割して測定試料とし、本研究により開発したC-14分析法によりC-14定量を行うことで、乾燥ストレス下での炭素動態の差異を評価した。光合成により葉から吸収されたC-14が、光合成産物として茎葉部から根へと送られたことを示唆する結果を得ることができ、乾燥ストレス有無でそのトレンドに顕著な差を確認することができた。本結果については、再現性・妥当性を検証したうえで、植物生理学的な視点から詳細な解釈を進める必要があるものの、本システムを用いて、光合成産物の動態を評価することができ、植物中炭素動態評価を実証できた。これより、本研究によって開発されたC-14分析法の生体・環境トレーサーにおける有用性を明らかにすることができた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)