研究実績の概要 |
普通ソバにおける主要アレルゲンの一つであり、アナフィラキシー反応の原因物質と考えられている2Sアルブミンに関し、その遺伝子多様性を解析した。その上で、有用な対立遺伝子を単離し、集積することで、2Sアルブミンの蓄積量削減または組成の改変をし、低アレルゲン化を図ることを目的とした。具体的には、2016年に解明された全ゲノム概要配列データベースにある5つの2Sアルブミン遺伝子g03, g13, g28, g11, g14のうち、偽遺伝子であるg03を除く4種について解析を進めた。g13, g28については、申請者らのグループにより見出されたヌル対立遺伝子の集積を試み、g13についてはヌル対立遺伝子のホモ接合体を得た。また、g28についてはヌル対立遺伝子の遺伝子頻度の高い集団を得た。一方g11, g14については、ヌル対立遺伝子または機能変化した対立遺伝子を探索し、利用することを試みた。以上の有用対立遺伝子の集積が、2Sアルブミンの蓄積量や機能に及ぼす影響を解析し、低アレルゲン化の効果を検証している。一方、平成30年度は大腸菌発現系を構築し、組換え2Sアルブミンの機能解析を進めた。大腸菌宿主を変えて発現量と溶解性を調べた上で、最適な発現条件を明らかにした。発現させた組換え2Sアルブミンを精製し、その高次構造、トリプシン消化性の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続き、自然交配と遺伝子型決定を繰り返すことで後代種子においてヌル対立遺伝子ホモ接合体を得ることを試みる。また、g13, g28タンパク質をそれぞれ特異的に認識する抗体を調製し、ホモ接合体種子におけるg13, g28タンパク質蓄積量がそれぞれ低減化していることを確認する。一方g11, g14については、ヌル対立遺伝子を見出すことは出来なかったものの、トリプシン消化性が向上していることが期待される対立遺伝子を見出した。平成31年度は、これら機能変化した対立遺伝子を有するソバ個体を単離、増殖し、ホモ接合体を得ることを目指す。一方、平成30年度は大腸菌発現系を構築し、組換え2Sアルブミンの機能解析を進めた。本年度も、引き続き組換えタンパク質の解析を進める。
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