研究課題/領域番号 |
18J14961
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
菅 孔太朗 鹿児島大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 亜熱帯 / 汽水域 / 朽木 / ゴカイ科 / 分類 / 食物連鎖 |
研究実績の概要 |
本研究では「汽水域の朽木の内部」という特異な生息場所に依存したゴカイ科多毛類について,その分類学的実体と生活様式を明らかにすることを目的とする.南西諸島の性質の異なる3つの汽水域,すなわち西表島のマングローブ(ニッパヤシの朽ちた葉軸内),宮古島のマングローブ(朽木内),徳之島の非マングローブ汽水域(朽ちたソテツ内)から採集されたゴカイ科標本について分類学的検討を行った.その結果,日本未記録種を含むゴカイ科4属4種が見出された.標本の大部分を占めたのはNamalycastis属の種であった.本属は熱帯・亜熱帯の汽水域に特徴的なグループであり,マレーシアのマングローブ汽水域では,ニッパヤシの葉軸内から本属の種が見つかっている.南西諸島産の種とマレーシア産の種は,形態的に異なることから別種と判断した.そこで南西諸島産の種の分類学的実体を明らかにするために,インドネシア産の近似種のタイプ標本をドイツのJena大学から取り寄せ,詳細な比較検討を進めている. 本研究によって朽木利用性のNamalycastis属が南西諸島の広い範囲に生息していることが明らかになりつつある.それらはマングローブ域だけでなく,非マングローブ域にも見られた.いずれの調査地においても朽木内部に優占的に生息しており,他属の種を伴うことは稀であった.また,消化管内容物を調べたところ朽木の断片が多数見つかった.これらの結果は,汽水域に集積する朽木を食物資源とした未知の食物連鎖の存在を示唆するものであり,熱帯・亜熱帯の汽水域生態系を保全していく際の重要な基盤になると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南西諸島(西表島,宮古島,徳之島)のマングローブ・非マングローブの汽水域の朽木内から採集されたNamalycastis属標本について分類学的検討を進めている.比較検討にあたり,マレーシアのマングローブの朽木内から採集された標本と,インドネシア産の類似種のタイプ標本も参照している.一部の標本については形態観察に加えてDNA解析も行なっている.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に続き,汽水域の朽木内から得られたNamalycastis属標本の詳細な分類検討を行い,各種の記載を行う.本属の分類検討には熱帯種の参照が重要であるため,国外(マレーシア)でも標本採集を実施する予定である.また,国内(九州や南西諸島)でも追加標本の採集を行い,各種の地理的分布を明らかにする.合わせて生息場所の環境条件を詳しく調べることで,各種の分布特性を明らかにする.優占的に出現する種については消化管内容物の検討により食性の解明を試みる.以上の検討によって得られた分類学的・生態学的知見をとりまとめて,学会で発表すると共に,学術論文として公表する.
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