HMG-CoA還元酵素(HMGR)は、コレステロール生合成経路における律速酵素であり、転写レベルと翻訳後レベルでのフィードバック制御を受ける。既知の合成低分子化合物であるSR12813は、HMGRの分解を介してコレステロール低下作用を示すことが報告されている。しかしながらその直接的なターゲット分子やメカニズムは明らかになっていなかった。そこで、SR12813が直接HMGRに結合することでHMGRの分解を誘導しているという仮説を立て、その検証のためにHMGRに対する光親和性標識プローブの創製を目指した。 SR12813をリード化合物として、HMGR分解活性を指標とした構造活性相関を取得し、光親和性標識プローブ化に必要な官能基の導入部位を検討した。HMGR分解活性はHMGRの触媒ドメインをluciferaseで置き換えた融合タンパク質をHEK293に安定発現させ、化合物処理による細胞中のHMGR量の変化を発光により定量することで評価した。 構造展開の結果、SR12813と比較して10程度強いHMGR分解活性を有する誘導体OGK3042の創製に成功した。また、得られた構造活性相関を基に光親和性標識プローブsrpDHYの創製に成功した。このsrpDHYを用いてHMGRに対するラベリング実験を行った所、srpDHYによるUV依存的なラベリングが起こり、ラベリングに対してOGK3042の濃度依存的な競合が起こることが明らかとなった。この結果から、想定した通りSR12813類縁体のHMGR分解活性は、化合物がSR12813に直接結合して起こることが示唆された。
|