研究課題/領域番号 |
18J15114
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
淺野 祐太 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | コンピュータビジョン / 分光 / 吸収特性 / 形状推定 / 蛍光 |
研究実績の概要 |
本研究では、水による光の吸収特性を活用した物体の三次元形状推定手法を開発した。従来の形状推定手法は、光や電波、音波などを対象に照射し、物体表面での反射情報を利用するため、半透明な素材や鏡面反射を起こす素材など反射特性が特殊な対象の三次元形状を取得できないという問題点があった。そこで、反射情報を利用せずに、水による近赤外線の吸収量を特徴量として用い、異なる波長間の光の吸収量差を抽出することで、媒質の厚みから三次元形状を推定する手法を考案した。近赤外線領域の3つの波長情報を活用し、反射スペクトルを線形近似することで、対象の反射率に依存しない推定を可能にしている。そして、リアルタイムな三次元形状推定を実現するために必要な3波長画像を同時に取得可能なイメージングシステムを構築し、高速に計算可能なアルゴリズムを開発した。これにより、従来は推定することが困難であった特殊な反射特性を有する対象をリアルタイムかつ正確に形状推定することを可能にした。 一方で、物質が光を吸収する特性として、吸収した光とは異なる波長の光を発光する蛍光という特性に着目し、蛍光特性を利用した物体識別手法を開発した。蛍光は様々な物質に含まれており、物質毎に異なった蛍光特性を示す。そのため、蛍光は素材の種類や性質、異物が含まれていないかなどを識別するための特徴量としての活用が期待される。しかし、一般的な白色光源下では、微細な蛍光特性の違いをRGBのカメラ画像上で判別するのは困難である。そこで、識別対象に照射する光源の分光スペクトルを機械学習によりデザインすることで、微細な蛍光特性の差異をRGB画像で識別する手法を開発した。デザインされた光源下において撮影されたRGB画像の輝度値を、学習したパラメータを用いて識別空間に投影することで、白色光源下では識別できない対象を容易に分類・識別することを可能にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、特殊な反射特性を有する物体の三次元形状を取得するために、媒質による光の吸収特性を用いて、3波長情報を複合的に活用した形状推定アルゴリズムを開発した。そして3波長情報を同時に取得できるイメージングシステムを構築し、対象の形状を正確に復元可能であることを確認した。 また、光を吸収し、より長波長の光を発行する蛍光特性を利用した対象識別手法を開発した。通常の白色光源下では全く識別できない対象を、機械学習によりデザインした光源下で撮影されたRGB画像から、対象を精度良く識別することに成功した。 以上のことから、当初の予定通りに研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は3波長情報を活用し、媒質による光の吸収量の波長方向における変化量から三次元形状を推定する手法を開発した。しかし、3波長間の反射スペクトルを線形近似しているため、材質に依存する反射特性による影響を除去できているものの、反射率が急激に変化するなど特殊な反射スペクトルを有する対象の三次元形状を正確に推定できない場合がある。そこで、3波長ではなく1波長のみの光の吸収情報を用いた形状推定手法を検討する。活用できる波長情報が大幅に減るため、それを補うために他視点情報を活用するなど、付加情報が必要であると考えられる。 また、現状はイメージングシステムを媒質の外に設置し、媒質を固定した状態で撮影実験を遂行してきた。しかし、実際に活用される場では、媒質が動いて波打っていることが予想される。そこで、時間方向の情報を活用することで、媒質の動き自体を推定し、対象の推定精度を安定させることを目指す。
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