本研究は,機能性ソフトマテリアルの作製において重要である分子配向制御に着目し,新たな機能性材料の開発を目的としている。 機能性ソフトマテリアルの作製においては,優れた機能分子の構造設計などの有機合成的なアプローチのみならず,分子配向を制御し機能化する加工プロセスも重要である。しかしながら,配向制御技術の開発は黎明期にあり,選択できる物質群に制約があるなどの課題が残されている。これまでに,多様な物質郡に適用可能な配向法の開発を目指して,物質拡散を利用した新たな分子配向法である「動的光重合」の確立に取り組んできた。本研究では,この研究過程において見出した自己組織的に形成したマイクロスケールの相分離構造体についての配向制御について検討した。本研究により構造体のサイズや形状の精密な制御を行うことで,従来法では作製困難であった複雑な機能を有する大面積高機能フィルムの創製について検討した。 はじめに,サイズ・形状をコントロールした構造体の形成について研究を行った。可動式のフォトマスクを介して光重合を行い作製したフィルムに熱処理を施したところ,一方向に配向した構造体が形成できることを見出した。このとき,試料の架橋剤濃度を変化させることで,構造体の大きさが変化することがわかった。さらに,照射する光の形状や動きの操作が可能なプロジェクターを用いて光重合を行ったところ,光の移動方向に沿った構造体形状の制御に成功した。 次に,作製したフィルムの光機能についてレーザー光を用いて評価した。その結果,構造体は光を回折する機能をもつことを見出した。また,構造体を同心円状に配向させたフィルムが集光機能をもつことがわかり,回折レンズとして働くことを明らかにした。 本手法は光を用いて複雑に配向した構造体を形成できることから,幅広い機能性材料創製に有用であると期待できる。
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