研究実績の概要 |
本研究の目的は有用揮発性化合物を高濃度かつ、高効率で生産する気相微生物反応プロセスを構築することである。モデル反応系として、ゲラニオールからトランス-ゲラン酸に気相変換するプロセスを作る。ゲラニオール、トランス-ゲラン酸は揮発性化合物であることに加え、水溶性が極めて低く、液相反応による物質変換は極めて困難である。微生物触媒は担体へ固定し、基質ゲラニオールは気体で供給する。そして、生産物トランス-ゲラン酸は菌体から気体として回収する。目的達成のため、高付着性と高有機溶媒耐性を併せ持つAcinetobacter sp. Tol5を用いてトランス-ゲラン酸の高生産微生物触媒を創出し、気相微生物反応プロセスを構築する。平成30年度は、トランス-ゲラン酸の高生産微生物触媒の創出を実施した。 (1)目的生産物であるトランス-ゲラン酸および中間体であるゲラニアールに対するTol5株の耐性評価:既報より4倍以上の濃度に耐えられることが明らかとなった。 (2)ゲラニオール/トランス-ゲラン酸変換の確認:Tol5株にはゲラニオールに対して変換能力を持たないことを明らかにした。そこで変換能力を付与するため、人工合成遺伝子を用いて導入した。得られたTol5形質転換体が機能するか、バッチの液相反応系にて確認するため、GC-MSを用いて継時的に評価したところ、Tol5形質転換体は2種の化合物を微量生産した。それらを単離・精製し解析した結果、トランス-ゲラン酸と(1R,3R,4R)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-1,3-シクロヘキサンジオールであることが明らかとなった。 (3)トランス-ゲラン酸高生産 Tol5株の創出:配列類似性解析によりTol5のゲノムから見出したホモログを欠損し、変異体を取得した。得られた変異体はトランス-ゲラン酸高生産株であることが明らかとなった。
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