本年度は、これまで得られた知見を元に、ガス状ゲラニオールから高付加価値モノテルペノイドであるトランス-ゲラン酸への気相バイオプロダクションを目的とし、Tol 5の代謝を改変後、Tol 5 が有する接着蛋白質AtaAを用いた担体固定化法による気相反応にて世界で初めて実証した。 まず、Tol 5へゲラニオールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子geoAを異種発現させた Tol 5 (pGeoA) を用いて液相生産を行い、 トランス-ゲラン酸蓄積量が8日目から減少することを明らかにした。次に、代謝改変を目的にTol 5 ゲノムからトランス-ゲラン酸代謝酵素FadD4を同定し、相同組換え法にて欠損株を取得した。取得した欠損株にpGeoAを導入することでTol 5ΔfadD4(pGeoA)を作製し、トランス-ゲラン酸の液相生産を実施し、蓄積生産および生産性の向上に成功した。また、Tol 5 ΔfadD4 (pGeoA) は Tol 5 野生株と同様にポリウレタン担体に対して効率的な固定化が可能であり、菌体周辺にはバルク水がないことを明らかにした。最後に、トランス-ゲラン酸の気相バイオプロダクションを行い、ヘッドスペース成分と担体への吸着成分をGC-MSにて解析し、世界で初めて高付加価値化合物の気相バイオプロダクションに成功したことを示した。生産量及び生産速度はゲラニオールの濃度依存的に増加し、最大生産速度は液相反応に比べ約20倍増加することを明らかにした。より効率的な生産物回収プロセス構築のため固定化微生物の剥離を要さず生産物の回収が可能な溶媒組成を見出し、生産物回収プロセスの簡略化および効率的な繰り返し生産を達成した。これらの結果から、反応から生産物分離に至る真のグリーンバイオプロセスの開発を示し、気相において揮発性化合物のより環境に優しい生産が可能となることが示唆された。
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