研究課題/領域番号 |
18J15230
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
坂根 慎治 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 凝固 / デンドライトフラグメンテーション / phase-field法 / 格子ボルツマン法 / GPU / 適合細分化格子法 |
研究実績の概要 |
凝固組織の微細化は高性能材料開発において重要な課題である.本研究では,添加剤によらない組織微細化の鍵になると注目されている,典型的な凝固組織形態であるデンドライト(樹枝状結晶)のフラグメンテーション(破断)の発生メカニズムを数値計算によって解明することを目的とする.そこで,自発的なフラグメンテーションを再現可能なphase-field法に基づく凝固モデルを構築し,その高効率大規模計算法を確立する.本年度は,自発的デンドライトフラグメンテーションの再現において考慮が必要となる,固液界面進展に伴う潜熱の放出とその移流拡散を取り扱うため,液相流動を伴う2元合金非等温凝固phase-filed モデルを構築した.さらに,デンドライトフラグメンテーションによって分離した固相片が液相中を運動する現象をモデル化し,2次元phase-fieldデンドライト成長計算コードとして実装した.熱の移流拡散や液相流動,デンドライトフラグメンテーションの判定や固体の運動を取り扱うことによって計算コストが増大する.そのため,計算の大規模化・効率化を目的として,場ごとに異なる格子幅および時間増分を用いる複数格子・時間増分法や,高い空間解像度を要する固液界面近傍にのみ細かい数値格子を配置する適合細分化格子法を,デンドライト成長のための複数GPU(Graphics Processing Unit)並列phase-field計算手法に適用し,その計算性能を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フラグメンテーション後のデンドライトの運動を取り扱うことを想定し,その妥当性を検証するため,液相中を長距離落下するデンドライトの成長シミュレーション手法構築と評価を行った.次に,液相流動を伴う非等温2元合金凝固phase-fieldモデルの構築と複数格子および時間増分法の適用による計算高速化を行った.それらの成果はそれぞれ第一著者として学術論文で発表した.さらに,デンドライトフラグメンテーションの判定手法を構築し,加熱によって強制的にフラグメンテーションさせた場合に分離した固相片が液相中を漂いながら成長する現象を再現できることを確認した.また,2次元デンドライト成長のための複数GPU並列計算手法への適合細分化格子法の適用もすでに完了しており,現在詳細な計算性能の評価を進めている.今後は,これまでに開発した手法を組み合わせることによって,最終的な研究目的である自発的なデンドライトフラグメンテーションの再現が確実に期待されるため,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した計算手法を組み合わせることで,デンドライト成長中の自発的フラグメンテーションを再現可能な凝固モデルを構築する.その後,構築した計算手法を用いて,凝固条件を系統的に変えた柱状デンドライト成長計算を実施し,デンドライトフラグメンテーション発生の有無を評価する.また,計算より得られた情報からその発生メカニズムを解明し,フラグメンテーション発生に支配的な因子を特定する. 次に,柱状晶形成,フラグメンテーション発生,デンドライト片の運動・衝突とその後の多結晶化による等軸晶形成という一連の凝固過程を連続的に再現する大規模計算を,系統的に変えた凝固条件下で多数実施し,等軸晶微細化のための基礎データ蓄積および微細化を支配する因子の特定を行う.
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