研究課題
本研究では噴霧燃焼の機構解明のため,液滴間の燃え広がりに及ぼす液滴干渉の影響について解明することを目的としており,宇宙実験と地上実験の両方からアプローチした.宇宙実験では,5個の液滴を有する液滴群要素実験および最大152個の液滴を有するランダム分散液滴群実験から,液滴間の燃え広がり限界について詳細に調査し,液滴群の燃え広がりメカニズムの解明を行った.その結果,ランダム分散液滴群の群燃焼発現限界付近で複数液滴の同時着火における爆発的現象が観察された.この爆発的現象は燃え広がり経路が複雑化したことにより,燃え広がり経路が深く回り込み,既に着火している別経路の火炎から長い時間加熱され,未燃液滴周囲に可燃性混合気を形成し,深い回り込みによる長い着火遅れ時間が可燃性混合気層の拡大につながり,爆発的現象が発生したと考えられる.また,未燃液滴周囲の可燃性混合気層の形成には冷炎が起因していると考えた.地上実験では,ランダム分散液滴群の一部分を最少液滴数で表現した液滴群要素を用いて要素実験を実施した.要素実験では,2個の干渉液滴を群火炎と見立て,燃え広がり限界付近に配置された未燃液滴周囲で低温酸化反応による冷炎発生の有無を調査した.冷炎は約750Kの低温度領域で発生するため,現在地上実験にて使用している実験装置に赤外線カメラを搭載し,宇宙実験で計測不可能な1000K以下の温度場の可視化を行った.その結果,燃え広がり限界付近において冷炎が発生していることが確認された.このことから,ランダム分散液滴群の群燃焼発現限界付近の条件で観察された,複数液滴の同時着火による爆発的現象は既に形成された周囲の火炎によって未燃液滴の周囲で冷炎が発生し,未燃液滴表面に可燃性混合気層が形成され,長い着火遅れ時間が未燃液滴周りの可燃性混合気層の拡大につながり,爆発的現象に寄与したと考えられる.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
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Proceedings of the Combustion Institute
巻: 37 ページ: 3409-3416
https://doi.org/10.1016/j.proci.2018.07.106
International Journal of Microgravity Science and Application
巻: 36 ページ: 360303-1-6
https://doi.org/10.15011//jasma.36.360303