• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

高分子医薬品の脳内送達に資するヒト脳関門透過性環状ペプチドの同定とDDSへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 18J15384
研究機関熊本大学

研究代表者

山口 駿介  熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワード脳内送達法 / 血液脳関門透過性環状ペプチド / phage display法 / マクロピノサイトーシス / 高分子医薬品
研究実績の概要

平成30年度は当初の研究計画通り、血液脳関門透過性環状ペプチドXを提示するphage(X-phage)がin vivoマウスにおいて血液脳関門(BBB)を透過し、脳実質へと移行していることを明らかにした。また、当初の研究計画では環状ペプチドXのマウス体内動態を解析する予定であったが、ペプチド単体の体内動態ではなく、ペプチドを修飾したリポソームの体内動態を解析することが新規脳内薬物送達法を開発する上で必須であると判断し、令和元年度に行うこととした。
環状ペプチドXのさらなる脳移行率の改善や臨床応用を実現するためには、環状ペプチドXのBBB透過機構を解明することが必要不可欠であると考え、当初の研究計画を変更し、環状ペプチドXのhCMEC/D3細胞(ヒトBBBモデル細胞)透過機構を解析した。その結果、環状ペプチドXはhCMEC/D3細胞生存率および密着結合には影響しなかった。さらに、X-phageは飽和性輸送分子を介したマクロピノサイトーシスを介してhCMEC/D3細胞内へ移行していることが明らかとなった。以上の結果から、環状ペプチドXは細胞毒性が低く、マクロピノサイトーシスを惹起することでphageの経細胞透過を促進していることが示された。従って、環状ペプチドXは高分子医薬品やナノ粒子をBBB透過させるキャリアとして有効であると考えられる。
以上の研究成果を第1回超分子薬剤学FGシンポジウム、第12回次世代を担う若手医療薬科学シンポジウムおよび第139回日本薬学会において発表した。また、第1回超分子薬剤学FGシンポジウム、第12回次世代を担う若手医療薬科学シンポジウムおよび第139回日本薬学会において優秀発表賞を受賞した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

独自に同定した脳関門透過性環状ペプチドXを応用することで、新規drug delivery system(DDS)を開発する上で重要な知見を見出したため。具体的には、①環状ペプチドXを提示するphageがin vivoマウスにおいて、BBBを透過し、脳実質へと到達していることを明らかにした、②環状ペプチドXのBBB透過機構には高分子を細胞内に取り込むことが可能なマクロピノサイトーシスが関与していることを見出した点が挙げられる。環状ペプチドXは、高分子医薬品やナノ粒子よりも巨大なphageを脳実質へ送達可能であることから、本環状ペプチドをDDSへと応用することで、これまで脳実質への送達が困難であった高分子医薬品やリポソームといったナノキャリアの脳送達が可能となることが期待される。

今後の研究の推進方策

環状ペプチドXを応用し、BBB透過型リポソームを開発する。リポソーム表面の環状ペプチド修飾量を変化させた際のリポソームの性質やin vitroヒト、サル、ラットBBB透過速度を検討し、最もBBB透過速度の速いリポソームの合成方法を確立する。また、BBB透過型リポソームをマウスへ投与し、脳移行性および体内動態を解析する。さらに、BBB透過型リポソームを用いたCPN-116の脳内送達による肥満予防・治療効果を検討する。高脂肪食負荷によって肥満を誘導する前、または肥満誘導後において、CPN-116を封入したBBB透過型リポソームをラット尾静脈内投与し、体重、摂餌量および血液生化学検査の推移を解析する。
次に当初の研究計画に加えて、環状ペプチドXのBBB透過機構を解析する。環状ペプチドXのアミノ酸配列がタンパク質Yの一部と類似していることに着目し、まず、タンパク質Y受容体のリガンドを用いたX-phageのhCMEC/D3細胞透過阻害実験を行う。現在、予備検討においてタンパク質Y受容体がX-phageのhCMEC/D3細胞透過に関与していることを確認している。今後、さらなる詳細な検討を行い、環状ペプチドXのhCMEC/D3細胞透過機構を解析する。
また、タンパク質Yはエクソソームとして細胞内から分泌され、他の細胞や臓器に伝播することが報告されている。そこで、環状ペプチドXのhCMEC/D3細胞内から脳実質側への分泌にエクソソーム分泌が関与している可能性がある。環状ペプチドXがエクソソーム分泌を介してhCMEC/D3細胞内から分泌されているかを明らかにするために、エクソソーム分泌促進剤であるモネンシンを処理した際のX-phageのhCMEC/D3細胞透過速度を解析する。さらにX-phageとエクソソームがhCMEC/D3細胞内で共局在していることを免疫染色によって確認する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [学会発表] 脳内への高分子送達に資する新規BBB透過性環状ペプチドの同定2019

    • 著者名/発表者名
      山口駿介、伊藤慎悟、増田豪、大槻純男
    • 学会等名
      医療薬学フォーラム2019
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子を脳実質へ送達する血液脳関門透過性環状ペプチドの同定2019

    • 著者名/発表者名
      山口駿介、伊藤慎悟、増田豪、大槻純男
    • 学会等名
      第139回日本薬学会
  • [学会発表] 高分子医薬品の脳内送達に資する血液脳関門透過性環状ペプチドの同定2018

    • 著者名/発表者名
      山口駿介、伊藤慎悟、増田豪、大槻純男
    • 学会等名
      第1回超分子薬剤学FGシンポジウム
  • [学会発表] 脳内への高分子送達に資する新規BBB透過性環状ペプチドの同定2018

    • 著者名/発表者名
      山口駿介、伊藤慎悟、増田豪、大槻純男
    • 学会等名
      第12回次世代を担う若手医療薬科学シンポジウム
  • [産業財産権] 血液脳関門透過性ペプチド2018

    • 発明者名
      山口駿介、伊藤慎悟、大槻純男
    • 権利者名
      山口駿介、伊藤慎悟、大槻純男
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-169209

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi