本年度は、まず、独自に同定したBBB透過性環状ペプチドSLSの透過機構にvitronectin受容体であるintegrin familyを介したマクロピノサイトーシスに加え、エクソソーム分泌経路が関与していることを明らかとした。さらに興味深いことに、環状ペプチドSLSの透過は血漿中に豊富に存在するfibrinogenやtransferrinによって促進されることが示唆された。 さらにリポソーム(150 nm)の表面に環状ペプチドSLSを結合させることで、リポソームのin vitroヒト(hCMEC/D3細胞)、サルおよびラットBBB透過が促進された。また、in vivoマウスにおいても、環状ペプチドSLSを結合したリポソームはBBBを透過して脳へと移行することを確認した。一方で、環状ペプチドSLSを結合しても、リポソームの血中濃度、肝臓および脾臓への蓄積量には影響しなかった。従って、環状ペプチドSLSはナノ粒子のBBB透過を促進可能であることが実証された。 多少の研究計画の変更はあったものの、当初の研究計画通りナノ粒子の脳送達を可能とするDDSの確立に加え、その透過機構を解明するに至ったため、概ね順調に研究を遂行出来たと考える。
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