本研究は微小反応場におけるナノ粒子の生成、成長、そして凝集について基礎的な知見を得ることを目的とした。本年度は金属錯体の溶液試料と貧溶媒を撹拌試料して生じる微小液滴がナノ粒子の形態および粒子径に及ぼす効果の解明、およびマイクロ流路によりサイズを制御した液滴中での微小プラズマ発生について研究活動を行った。ヘキサン/塩化金酸水溶液、およびフェロセンヘキサン溶液/水の撹拌により水中油滴型のエマルションを形成し、原料が水に溶解する条件と有機溶媒に溶解する条件にてフェムト秒レーザーをそれぞれ照射した。ヘキサン/塩化金酸水溶液の水中油滴型エマルションへのレーザー照射では、キャッピング剤を用いることなく直径10 nm未満の大きさの金ナノ粒子の生成に成功した。レーザー照射時間にかかわらず平均粒子径は5 nm程度で一定であった。さらに、乾燥により金ナノ粒子は円形状に濃縮されつつも凝集しないことが分かった。金ナノ粒子の1次粒子が液滴表面に捕捉されることで粒子成長が抑制されると結論した。なお、この研究に基づいた論文はアメリカ化学会のLangmuirに掲載された。一方、フェロセンヘキサン溶液/水の水中油滴型エマルションへのレーザー照射では、油相側に原料分子が溶解しているにもかかわらず、レーザー照射後の水相において10 nm未満の鉄ナノ粒子が分散して得られることを見出した。また、原料濃度を10倍にしても、レーザーの照射時間にかかわらず、平均粒子径は10 nm未満のままであった。フェロセンを溶解したヘキサン液滴が微小な反応場として機能し、粒子および鉄原子の凝集が抑制されると結論した。さらに、市販のシリコン樹脂製マイクロ流路を用いて液滴のサイズ制御条件の検討を行った。微小液滴内でのナノ粒子生成に向けて、レーザー照射系の構築や、マイクロ流路内における各試料の流速条件およびレーザー照射条件の最適化を行った。
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