研究課題/領域番号 |
18J15458
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐々木 勇人 横浜国立大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 機械学習 / ブースティング / コスト考慮型学習 / 生殖補助医療 / 顕微授精 |
研究実績の概要 |
本研究は顕微授精における胚培養士の知見に基づいた精子選別支援システムの実現に取り組んでいる。同システム実現のためには、精子検出器と精子のスコア予測器の構築が必要であり、機械学習によりこれを実現する。該当年度では①「精子検出器と精子のスコア予測器の双方の学習を同時に行うマルチタスク学習」②「精子画像の超解像化」に取り組む計画を立てた。 ①に関しては、A.「スコア予測器学習のためのデータ収集」とB.「取りこぼしや誤検出を調整可能な検出アルゴリズムの開発」を実施した。 Aのデータ収集では、2箇所のクリニックに所属する6人の胚培養士の協力を得て精子に対する5段階のスコアを収集した。これらのデータを分析した結果、胚培養士が選別の際に着目する形態・運動的特徴に差異があることがわかった。したがって、全教師データを一括で学習することは困難であり、教師データの適切な分割方法を検討する必要がある。 Bでは適応的しきい値制御ブースティングというアルゴリズムを開発した。この手法を用いた精子検出はスコア予測器に渡すデータを制御できるという観点で意義がある。検出器の出力がスコア予測器に入力として渡されるため、検出器とスコア予測器を同時に学習する際に、スコア予測器が利用可能な教師データに自由度を持たせることが可能になる。 ②に関しては、超解像を適用する前に低解像を許容した学習手法の分析に取り組んだ。超解像化は学習器の用いる特徴の次元数を大きくするため、データが形成するクラスタ間の重なりは小さくなる。一方で低解像度の場合には相対的にクラスタ間の重なりが大きくなる。①のBで取り組んだ適応的しきい値制御ブースティングが、クラスタ間の重なりが大きい検出問題に有効であることを確認している。この分析結果は、超解像化したデータを用いた検出・スコア予測の有効性を確認するための比較手法として重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「精子検出器と精子のスコア予測器を同時に最適化するマルチタスク学習」の計画当初は、適応的しきい値制御ブースティングをカスケード型につなげた学習モデルを計画していた。この学習モデルは胚培養士ごとに着目している形態・運動的特徴に大きな差異がないことを仮定していた。しかしながら培養士によるスコア情報の収集の結果、クリニックや胚培養士個人によって精子選別時に着目している特徴に差異があることが判明したため、当初計画していたカスケード型のマルチタスク学習は困難であることが分かった。着目している特徴の差異を考慮した学習モデルの検討が新たに必要になり、当初の計画と比較して遅れが生じている。 また、「精子画像の超解像化」に関しては、適応的しきい値制御ブースティングが低解像度画像に関する学習に有効である可能性が研究実施途中に判明したため、当初の実施計画を変更して分析を行った。この実施計画の部分的な変更に伴い、当初の計画から遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
「精子検出器と精子のスコア予測器を同時に最適化するマルチタスク学習」に関しては、これまでに計画していたカスケード型マルチタスク学習モデルを部分的に変更する。特に、培養士ごとに着目している形態・運動的特徴が異なることを考慮する必要がある。具体的には、精子のスコア予測器最適化問題をランキング学習問題として捉え、ランキング学習における教師データの与え方について検討し、培養士によって精子選別の尺度が異なる問題に対処する。 「精子画像の超解像化」に関しては、低解像度画像に適応的しきい値制御ブースティングを実施した精子検出・スコア予測結果と、超解像度化を施した画像に対する精子検出・スコア予測結果とを比較し、その有効性を確認する。
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