研究課題
本研究は顕微授精における胚培養士の知見に基づいた精子選別支援システムの実現に取り組んでいる。 該当年度では①精子検出器の性能評価と②精子のスコア予測器の構築・評価に取り組んだ。 なお、当初の計画から変更して深層学習ではなくブースティングを用いたスコア予測器の構築を行った。これは本研究で収集した訓練データの規模では深層学習よりもブースティングの方が精子検出やスコア予測における汎化性能が高くなったためである。まず①に関して、精子検出の難しさを定量的に評価した上で開発した精子検出器の性能評価を行った。 精子検出の難しさは「理想的な精子検出器を用いた場合の誤分類率」で定量評価しており、 本研究で取り扱った動画像における精子検出に関して避けられない誤分類が発生することを事前に確認した。 前年度に開発した「適応的しきい値調整」は精子の見落としを減らすことを目的として、偽陽性を許容する代わりに偽陰性を減らすことが可能なアルゴリズムである。誤分類は避けられないという前提のもと、精子検出における偽陽性率の許容値を定めた上での偽陰性率を評価した結果、適応的しきい値を用いることで偽陰性率を有意に下げられることが実証された。続いて②に関して、少人数の胚培養士の知見を精子のスコア予測器に取り込む手法を提案し、その評価を行った。ラベル付けを行う胚培養士の人数が限られている場合に全培養士のグレード情報を区別せずに混ぜて学習すると、特定の胚培養士の知見が軽視されてしまうという課題があった。これに対し本研究では多目的最適化の考えをブースティングというアルゴリズムに取り入れることで、特定の胚培養士の知見が軽視される課題を解決する手法を提案した。この提案手法を「全培養士のグレード情報を区別せずに学習する場合」と比較したところ、提案手法は全ての胚培養士から均等にスコア予測方法を学習していることが明らかになった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems
巻: 139 ページ: 1461~1467
10.1541/ieejeiss.139.1461