研究課題
2型糖尿病患者の骨格筋でのジアシルグリセロール(DG)キナーゼδ(DGKδ)の発現低下は本症増悪化の重要な決定因子である.本研究ではDGKδの関わる脂質代謝を解明するために,DGKδにDGを供給する上流経路の解明を目的とした.前年度までに,DGKδはDG産生酵素のスフィンゴミエリン合成酵素関連タンパク質 (SMSr) と,両者の有するオリゴマー形成モジュールのsterile α motif domain (SAMD)を介して直接相互作用することで,両者が機能的に連関し,SMSrはDGKδの上流経路(DG供給酵素)として機能する可能性を示した.SMSrはセラミドとリン脂質の一種であるホスファチジルエタノールアミン(PE)を基質としてDGおよびセラミドホスホエタノールアミン(CPE)を産生する「セラミド依存的DG産生酵素」である.不思議なことに,SMSrは細胞内で極微量のCPEしか合成できないことから,DGもほとんど産生しないと考えられていた.本研究の発見と従来の報告の矛盾から,SMSrはセラミド非依存的グリセロリン脂質水解・DG産生活性を持つのではないかと考え,次の通り調べた.昆虫細胞・バキュロウイルス 発現系を用いて高純度にヒトSMSrを精製する実験系を構築し,精製SMSrのDG産生活性を調べた.予想に反して,精製SMSrはin vitroでホスファチジルコリン(PC)以外に,ホスファチジン酸,ホスファチジルイノシトール,PEなどグリセロリン脂質を加水分解し,DGを産生するMulti-glycerophospholipid PLC hydrolase (MG-PLC) 活性を示すことが明らかとなった.以上より,40年以上分子実体が不明だったPC特異的ホスホリパーゼCを発見したこと加え,意外にもヒトSMSrはMG-PLC活性を持つ新奇の多機能酵素であることを発見した.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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