研究課題/領域番号 |
18J20027
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮路 直実 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 園芸学 / 植物病理学 / アブラナ科 / 白さび病 / 抵抗性遺伝子 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
アブラナ科野菜であるコマツナやハクサイなどのBrassica rapa L.は、白さび病の発病により葉や茎などに白い病斑を生じる。本研究課題では、アブラナ科野菜が持つ白さび病抵抗性遺伝子を同定・単離すること、また白さび病抵抗性品種と感受性品種における白さび病菌感染時の応答機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は始めに、2018年に公開された参照配列(ver. 3.0)を使用して、抵抗性遺伝子座乗領域内から抵抗性遺伝子候補を選抜した。その結果、それまで使用していたver. 1.5の参照配列で探索した場合と比較して、候補遺伝子数が約4倍に増加した。また、白さび病菌接種前に発現している候補遺伝子を探索したところ、ほとんどの遺伝子は発現していなかった。ゆえに、候補遺伝子の多くは機能していない可能性が示唆され、候補遺伝子数をさらに限定できた。 また、抵抗性品種のリシークエンスを行い、構築した配列に次項のRNA-seqリードをマッピングし、新規の候補遺伝子を探索した。以上の結果より得られた候補遺伝子は、抵抗性品種と感受性品種で塩基配列を解析している。候補遺伝子の中には、両品種で塩基配列が異なるため抵抗性遺伝子として特に有力なものが含まれていた。 白さび病菌接種前と接種後において、抵抗性品種と感受性品種の被接種葉からtotal RNAを抽出し、RNA-seqを行なった。得られたリードを元に各遺伝子の発現量を算出した後、各品種において接種により発現量が変動した遺伝子(発現変動遺伝子)を選抜した。そして各品種における発現変動遺伝子を使用してGene Ontology解析を行った。その結果、抵抗性品種において発現量が減少した遺伝子群には、抵抗性反応に関わるものが多く含まれていた。一方で感受性品種では、これらの分類の遺伝子に有意な発現変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、抵抗性遺伝子座乗領域内から抵抗性遺伝子候補を選抜した。さらに候補遺伝子の中から、抵抗性品種と感受性品種で塩基配列が異なり、抵抗性遺伝子として特に有力である遺伝子を発見した。本年度の目標であった抵抗性遺伝子の単離には至っていないものの、候補遺伝子を十分に限定できていると考えている。 また、抵抗性品種と感受性品種の白さび病菌接種前後においてRNA-seq解析を実施した。さらに、接種による発現変動遺伝子を使用してGene Ontology解析を行うことで、抵抗性品種と感受性品種における白さび病菌感染時応答の違いを明らかにした。本年度は両品種における応答を解析し比較することが目標であったため、目標を達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
抵抗性遺伝子候補の塩基配列を抵抗性品種と感受性品種で決定する。これまでに得られたリシークエンス結果やRNA-seq結果と統合することで、抵抗性遺伝子を単離する。単離した抵抗性遺伝子は感受性品種に形質転換し、白さび病菌を接種することで機能を確認する。 また、本研究課題で得られた白さび病菌感染時のRNA-seqデータを、既報の萎黄病菌感染時や根こぶ病菌感染時のRNA-seqデータと比較する。そして、抵抗性品種または感受性品種で特徴的な応答や、伝染性や寄生性といった病原菌の特徴と関連した応答を探索する。
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