パルスレーザー堆積法を用いてLaTiO3がデルタドープされたSrTiO3システムを作製し、バックゲート電圧を印加する際に二次元電子ガスがどのように影響されるか磁気輸送特性を測定した。5原子層(uc)のLaTiO3薄膜と25ucのSrTiO3薄膜を連続して堆積して試料を作製し、負の電圧を印加すると輸送特性は可逆的に変調したが、正の電圧を印加すると不可逆な変調になった。電子の分布は極めて表面敏感であり、バックゲートによって変調可能である。また、ゲート電圧を印加したまま磁気抵抗を測ると、強度が大幅に変調できた。データを解析中にあり、投稿論文を準備している。また、CaTiO3基板上にLaAlO3薄膜を蒸着し、SrTiO3システムと同様な膜厚による絶縁体―金属転移が起こることを確認した。 その他に、物質材料研究機構との共同研究として、機械学習を用いた材料合成法の最適化に携わった。TiN は、物性基礎研究や半導体産業、量子コンピューターの素子の材料等、種々の分野で着目されている重要な物質である。ベイズ最適化で推定したTiN 薄膜の推奨作製条件を用いて試料を作製し、その試料の結晶性を機械学習のデータにさらに加え、次回の薄膜作製パラメーターの推定を行うことができる。その結果最適化された薄膜試料の 超伝導転移温度(TC)を測定し結晶性の評価を行なった。測定したResistivity の温度変化を解析すると、機械学習なしで作製した初期試料に比べて最適化された条件で作製した試料が明らかにより高いTCを示し、TiN薄膜において最高レベル(~5K)のTCを実現することが確認できた。この研究で機械学習を用いた同手法が薄膜作製プロセスの高効率化に有効であることが明らかになり、これらの結果をMaterials Today Physicsに発表した。
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