研究課題
本研究課題は、太陽・活動的な恒星の観測研究を通して、太陽・恒星のフレア・黒点などの磁気活動性の統一的理解の解明へ挑むことを目指している。2018年度は特に以下の5点について、研究実績が得られている。(1)ケプラー衛星の測光観測データから、恒星黒点の面積の時間変化を推定する手法を確率し、56の巨大黒点の面積の時間変化を推定することに成功した。これを太陽黒点の時間変化と比較した研究を、国際学会誌にて出版した。これを数値計算と比較するために、数値計算の専門家である堀田英之氏(千葉大)と継続的に議論をしている。(2)系外惑星のトランジットデータから、空間分解された恒星黒点の面積の時間変化を推定することに成功した。これを上記(1)と比較した内容を、国内・国際学会で報告し、現在論文を準備中である。(3)京都大学せいめい望遠鏡にて、活動的なフレアを頻繁に起こすM型星AD Leoのモニタリング観測を実施し、複数の恒星フレアを検出した。この際、X線衛星NICERや他の天文台での同時観測も行うことができ、解析を進めている。(4)古文献を用いて、過去の太陽活動について推定を行う研究を、大阪大学の早川尚志氏と共同で行い、1909年に巨大なフレア/磁気嵐が発生したことを発見し、共著として論文を出版した。(5)スーパーフレアを起こす太陽型星の分光観測データや位置天文学衛星のデータを利用し、これらの星が実際に太陽によく似た星であることを観測的に示し、共著として論文を投稿・受理された。
2: おおむね順調に進展している
まず、ケプラー宇宙望遠鏡を用いた恒星の磁気活動性の研究を行い、恒星の巨大黒点の寿命や生成・消滅率の測定を行った。これにより、恒星のダイナモ機構や恒星フレアの発生の理解にとって非常に重要な示唆を与え、当初の予定通り、結果を国際学会の査読論文として出版した。また、これを機に、同じくケプラー宇宙望遠鏡を用いて研究を行なっているワシントン大学のJames Davenport氏との共同研究を行い、系外惑星のトランジットを用いて恒星黒点を空間分解し、その時間変化を求めるという研究を行う機会を偶然にも得た。この機会を生かし、当初の予想以上に研究が順調に進み、結果も概ねまとまったことから、現在論文を準備中である。また、これらの成果を、5件の国際会議で口頭・ポスター発表を行い、研究成果の宣伝も順調に行った。また、今年度3月には京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡において、8.5晩に渡る長期の観測提案が採択され、巨大フレアを頻繁に起こす星AD Leoの連続モニタ観測を当初の予定通り行うことができた。この際、中央大学・西はりま天文台・X線衛星NICERとの同時観測し、多数のフレアの分光・測光データの取得に成功した。これは期待以上の成果であった。さらに、活動的な太陽型星の分光観測の論文にも共著で携わり受理され、他にも古天文の研究者との共同研究を行い共著で論文を出版した。このように、共同研究も同時に多数進行しており、巨大なフレアのデータを取得するなど、次年度に向けての準備もできており、研究は概ね順調に進展していると言える。
まず、グループとして、ケプラー衛星のデータ解析に引き続き取り組み、太陽型星だけではなく、より低温の星でのフレアについても、発生頻度や黒点サイズとの比較についての結果を論文化する。また、せいめい望遠鏡のデータを含め、恒星フレアの分光観測のデータが蓄えられつつあるので、解析や議論を進めたいと考えている。また、そのデータの理論的解釈のために、5-9月にコロラド大学のAdam Kowalski氏の元に訪問し、数値計算を用いて観測を理解する研究を行う。また、9-10月には、活動的なフレア星EV Lacなどのせいめい望遠鏡とTESS衛星との同時観測を目指すため、観測提案書を提出する。これらと同時に、系外惑星トランジットを用いた恒星黒点の面積の時間変化にまつわる論文を書き上げ、提出したいと考えている。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
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