研究課題
本年度は、自身が筆頭著者となる論文3報を論文化することができた。まず、ジアリールエテン結晶の光誘起結晶成長を用いたバイオミメティック材料の開発に関して、二つのジアリールエテンを混合することで、テングシロアリの翅の表面構造とその機能を再現することに成功した。この機能は、雨を弾き、霧を集める機能を有していることから、霧から水を創る技術に応用することが期待されている。この研究に関しては、Commun. Chem. 誌にて論文が掲載された。また、ハスの葉の超撥水性の起源であるダブルラフネス構造をジアリールエテン結晶の光誘起結晶成長を用いて再現し、そのサイズ、間隔などを精密にコントロールすることで、より水滴を弾く表面の作製に成功した。この結晶成長技術は、複雑な表面形状を制御することが可能な技術であり、固体表面の濡れ性の制御や、フォトニック結晶材料への応用が期待されている。この研究に関しては、Langmuir誌にて論文が掲載され、バックカバーにも採用された。また、ジアリールエテン結晶の光誘起屈曲現象を用いた物質輸送表面に関しては、光で屈曲する板状のジアリールエテン結晶が無数に成長した表面上にポリスチレンビーズをのせ、紫外光照射方向を変えることによる、物体を意図した方向へ輸送するシステムを開発することに成功した。この研究は、フォトクロミック結晶を用いた、光照射のみで駆動するソフトロボットとしての応用が期待されている。この研究に関しては、Angew. Chem. Int. Ed.誌にて論文が掲載され、バックカバーにも採用された。
2: おおむね順調に進展している
今年度中に、主著論文3報を含む合計5報の査読付き論文を掲載することができ、研究計画の一つである「ジアリールエテン結晶の光誘起屈曲現象を用いた物質輸送表面」に関しては、想定以上の成果として論文化することが出来た。現在進行中の研究に関しても順調に成果が出てきているので、次年度も引き続き計画に沿って進めていく。
現在はジアリールエテンの光誘起結晶成長を用いた蛍光増幅表面の研究を進めている。レーザー発振の原理の一つであるWhispering Gallery Mode (WGM)を利用し、結晶内での蛍光の増幅を試みている。光誘起結晶成長によってWGMが起こりそうな結晶を成長させ、ジアリールエテンとは別に蛍光分子を混合させておき、蛍光分子のみが吸収する励起光を照射することで、膜表面上で、複数の結晶がWGMによってレーザー発振を起こし、強力な光増幅が起こることを期待している。また、このシステムは、紫外光照射によってジアリールエテンを閉環化することで、蛍光を消光することができ、レーザー発振現象を光スイッチングすることができることが期待できる。現在は、ジアリールエテンと蛍光分子の組み合わせ、結晶膜の作成、光照射による目的としていた形の結晶の生成まで達成している。今後、実際にレーザー発振するかの確認実験を行う予定である。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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