今まで検討している金属合金を用いた電極触媒では電位を掃引するごとに第二金属元素が溶出してしまい長期的な触媒の利用が困難であった。そこで、ORR活性を決定する因子がPtの価電子帯領域の電子状態によるものが大きいことを踏まえて、触媒担体である金属酸化物の組成、構造などを工夫することによって、Ptの電子状態および構造をORRにおいて最適化できないか検討するために、2種類の遷移金属(M1およびM2)から合成した遷移金属酸化物複合材料(M1M2Ox)を、Ptの担持材料として使用した。また、今までのXPSを用いた電子状態の検討では、触媒全体の電子状態であり局所的な情報は得られていないため、新たな試みとしてEELSを用いたPt、Ptと金属酸化物の界面、金属酸化物しか観察されない領域におけるPtおよび金属元素のEELSスペクトルと組成比の分布などのデータを得ることにより、局所的な電子状態の変化を追跡しPt-金属酸化物間の電子的相互作用の情報を得た結果を記載している。担持体にM1M2Oxを使用することで一連の金属酸化物/CSCNT担持体上にコーティングされたPtナノ粒子のd-バンドセンターはSMSI効果によってPtの電子が修飾されることによって大きく値を変化させる。また、金属酸化物を適切に選択することによって意図的に調整でき、担体からPtへの電子供与が断片的ではなくMOx担持体の種類、およびM1M2OxのM1とM2の原子比によって体系的かつ意図的に制御され、金属酸化物担体からPtへの電子的影響と触媒活性の関係性を得られた。
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