研究課題/領域番号 |
18J20233
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
芦田 慶太 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ニッケル触媒 / 不斉環化カルボニル化反応 / γ-ラクタム / 五員環ニッケラサイクル |
研究実績の概要 |
平成30年度から取り組んでいたニッケル(0)とキラルホスホルアミダイト配位子から構成されるニッケル錯体を触媒としたエンイミン化合物の不斉環化カルボニル化反応の合成化学的な有用性を示すべく、その応用研究を行った。すなわち、生成物であるキラル多環式γ-ラクタムを合成中間体として、より複雑な骨格を有した多様なキラル含窒素環状化合物への誘導化が可能であることを実証した。これらの成果は、複雑な分子骨格のライブラリー展開が求められる創薬分野などファインケミカル合成に活かされる知見となる。ここまでと初年度に報告した研究成果を合わせた論文を執筆し、これをJ. Am. Chem. Soc誌にて発表した。 さらに、ニッケル触媒を用いた環化カルボニル化反応の基質一般性を拡張するために新たにインイミン化合物を検討した。その結果、Ni(CO)3PCy3を触媒とすることでインイミンの環化カルボニル化反応が進行し、多環式α,β-不飽和γ-ラクタムが生成することを見出した。さらに、量論反応によって反応中間体である五員環ニッケラサイクルを単離し、単結晶X線構造解析によってその構造を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニッケル錯体を触媒としたエンイミン化合物の不斉環化カルボニル化反応により生成する多環式ラクタムが有用な合成中間体であることを実証した。すなわち、C1,2,3位全ての不斉炭素の絶対構造が制御されたγラクタムや、α-アルケニリデンγ-ラクタム、ピロール誘導体を合成することが可能であった。 環化カルボニル化反応の基質適用範囲の拡張を実施した。すなわち、Ni(CO)3PCy3を触媒とすることでインイミンの環化カルボニル化反応が進行し、多環式α,β-不飽和γ-ラクタムが生成することを見出した。また、インイミンとニッケル錯体との量論反応を行った後、再結晶による生成を行うことで、触媒反応の中間体である五員環ニッケラサイクルを単離した。この錯体の構造は単結晶X線構造解析にもとづいて決定した。
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今後の研究の推進方策 |
インイミン化合物の触媒的環化カルボニル化反応における基質適用範囲の拡大を図る。また、本反応の合成化学的な実用性を実証するための生成物の多様な骨格への誘導化を検討する。さらに、エンアルデヒド化合物の触媒的環化カルボニル化反応が効率良く進行する条件を見出す。具体的には、配位子および反応温度、CO圧力、溶媒などの反応条件を精査する。
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