当該研究では、新しいプラズモニックナノ構造触媒の開発を行い、表面プラズモン共鳴による活性向上を最大化することを目的としている。昨年度は、Pdクラスター担持還元型酸化グラフェン(rGO)被覆Auナノロッド触媒を調製し、その構造同定と触媒活性評価を行った。 本年度は、rGO層上で触媒活性種の構造制御が可能であることに着目し、触媒の調製と特性評価を行った。Auナノロッド表面上でGOとPd前駆体を同時に水素還元することで、均一な粒子径を有するPdナノ粒子担持rGO被覆Au触媒が得られた。触媒を可視光照射下での直接過酸化水素合成反応に適用すると、暗所下に比べて約7倍生成量が向上した。種々の実験から、Auの表面プラズモン共鳴によって生じた熱電子がrGOを介してPdへと至り、Pd上でのH2活性化を促進していることが分かり、これに起因して反応が加速されたものと考察した。 以上の結果を踏まえ、当該研究の最終目的である表面プラズモン共鳴とシングルサイト活性種の協奏効果を発現する複合型触媒の開発を試みた。rGOと同様の層状構造を有する層状カーボンナイトライド(g-C3N4)を用いて触媒調製を行い、シングルサイトCo固定化g-C3N4被覆Auナノロッド触媒を合成し、各種キャラクタリゼーションによりその構造を同定した。触媒を可視光照射下での光触媒的二酸化炭素還元反応に適用すると、シングルサイトCo担持g-C3N4単体に比べて約3倍の活性を示した。Auナノロッドの表面プラズモン共鳴により、周囲のシングルサイトCo担持g-C3N4が活性化されたものと推察された。 以上のように、当該年度においてはrGOおよびg-C3N4上で活性種構造制御された触媒系を構築し、それぞれの特長を活かした反応へ応用することができた。これらの結果は、今後のプラズモニックナノ構造触媒の開発に対してその設計指針を提供するものである。
|