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2018 年度 実績報告書

高難度物質変換を指向した細胞表面提示バイオハイブリッド触媒の進化型構築

研究課題

研究課題/領域番号 18J20249
研究機関大阪大学

研究代表者

加藤 俊介  大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワードバイオハイブリッド触媒 / 人工金属酵素 / 指向性進化法 / Directed evolution / ロジウム錯体 / C-H結合官能基化
研究実績の概要

本研究では、Rh(III)錯体を活性中心に持つバイオハイブリッド触媒の構築と、そのC-H結合官能基化における触媒活性および反応位置選択性の向上をめざして、指向性進化法(directed evolution)への応用に取り組んでいる。平成30年度は、これまでタンパク質発現系への導入が困難であったRh(III)錯体の新規空配位座保護手法を新たに確立した。具体的には、Rh(III)-ジチオリン酸錯体において、硝酸銀の添加時にジチオリン酸配位子の解離が進行し触媒活性が再生することを見出し、このジチオリン酸のユニークな配位と脱離の挙動を利用し、Rh(III)の空配位座の保護を実施した。また、本保護手法を用い、緑膿菌由来膜タンパク質をもちいた細胞膜提示型バイオハイブリッド触媒を構築し、大腸菌細胞膜上でのオキシムおよびアルキンの付加環化反応を実施した。ICP-OESにより大腸菌細胞におけるRh錯体の存在が確認され、また反応後の溶液に生成物であるイソキノリン誘導体に由来する蛍光が観測されたことから、ホールセル触媒によるC-H結合官能基化反応の進行が示唆された。さらに本研究では、Rh(III)錯体固定化バイオハイブリッド触媒のdirected evolutionに向け、Maltose binding protein (MBP)タグを応用したハイスループットスクリーニング法を確立した。本スクリーニン法は、膨大なタンパク質変異体ライブラリーの精製と非天然金属錯体の導入を同時に実現する強力な手法であり、今後、本手法を用いたdirected evolutionにより、高い触媒活性・反応位置選択性を有するバイオハイブリッド触媒が開発されることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

directed evolutionによるタンパク質改変技術をバイオハイブリッド触媒へ応用することは非常に挑戦的である。これは、宿主細胞内で発現するタンパク質と非天然の金属錯体を複合化し、触媒活性を評価するハイスループットスクリーニング系を確立することの困難さに起因する。平成30年度は、この課題を解決することを目標とし、数々のアプローチからスクリーニング系の確立を試みた。中でも、本年度に確立したMaltose binding protein (MBP)タグを応用したスクリーニング手法は、夾雑物の多い宿主細胞環境下でスクリーニングを行う先行研究とは一線を画し、膨大なタンパク質変異体ライブラリーの精製と非天然金属錯体の導入を同時に実現する強力な手法である。当初の年次研究計画の通り、バイオハイブリッド触媒のDirected evolution手法を現時点で確立した。今後、MBPタグを応用した本手法を利用し、C-H結合官能基化において高い触媒活性・反応位置選択性を有するバイオハイブリッド触媒の開発に取り組む。

今後の研究の推進方策

上述のMaltose binding protein (MBP)タグを用いたスクリーニング手法を活用し、今後、Rh(III)錯体を活性中心に持つバイオハイブリッド触媒のdirected evolutionを実施する。具体的には、アリールオキシムとアルキンの付加環化反応によるイソキノリン誘導体合成反応を実施する。Rh(III)錯体近傍のアミノ酸残基に対しランダムな変異を導入した膨大なタンパク質変異体ライブラリを作製し、生成物のイソキノリン誘導体の蛍光特性を用いてハイスループットスクリーニングすることで、高い触媒活性・反応位置選択性を有するバイオハイブリッド触媒変異体を獲得する。タンパク質変異体ライブラリの作製としては、site saturation とerror-prone の二つの変異導入手法を検討しており、共同研究者であるアーヘン工科大学(ドイツ)のUlrich Schwaneberg教授とその研究グループと綿密なディスカッションを重ねながら実施する。また、得られた高い触媒活性・反応位置選択性を持つ変異体に対して、X線結晶構造解析を行い、そのRh(III)錯体近傍のタンパク質第二配位圏の立体構造を明らかにし、反応機構に対して詳細な知見を得る。Rh(III)錯体近傍の第二配位圏となるアミノ酸残基をdirected evolutionにより最適化することで、反応活性・位置選択性制御の達成を図る。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] RWTH Aachen University(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      RWTH Aachen University
  • [雑誌論文] Cavity Size Engineering of a β-Barrel Protein Generates Efficient Biohybrid Catalysts for Olefin Metathesis2018

    • 著者名/発表者名
      Grimm Alexander R.、Sauer Daniel F.、Davari Mehdi D.、Zhu Leilei、Bocola Marco、Kato Shunsuke、Onoda Akira、Hayashi Takashi、Okuda Jun、Schwaneberg Ulrich
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 8 ページ: 3358~3364

    • DOI

      DOI: 10.1021/acscatal.7b03652

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 人工金属酵素の創成 -非天然の金属錯体を生体分子へ-2018

    • 著者名/発表者名
      加藤俊介、林高史
    • 雑誌名

      化学と教育

      巻: 66 ページ: 588-589

    • 査読あり
  • [学会発表] Conjugation of a catalytically latent Cp*Rh(III) complex to construct a cell surface displayed biohybrid catalyst.2019

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Kato, Alexander Grimm, Akira Onoda, Ulrich Schwaneberg, and Takashi Hayashi
    • 学会等名
      日本化学会第99回春季年会(2019)
  • [学会発表] Construction of Cp*Rh(III)-linked Biohybrid Catalyst for the synthesis of isoquinolines.2018

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Kato, Alexander Grimm, Akira Onoda, Ulrich Schwaneberg, and Takashi Hayashi
    • 学会等名
      Aachen Protein Engineering Symposium (AcES) 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Synthesis of Isoquinoline Derivatives via C-H Bond Activation Catalyzed by Cp*Rh(III)-linked Biohybrid Catalysts.2018

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Kato, Alexander Grimm, Akira Onoda, Ulrich Schwaneberg, and Takashi Hayashi
    • 学会等名
      Biotechnology and Chemistry for Green Growth 2018
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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