研究課題/領域番号 |
18J20250
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹尾 映美 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | イメージング質量分析 / ステロイドホルモン / 誘導体化 / 副腎 |
研究実績の概要 |
原発性アルドステロン症(PA症)では、アルドステロンの過剰産生により高血圧が惹起される。従来は免疫組織化学染色がPA症の研究に用いられてきたが、この手法では産生酵素の局在しか分からず、実際にステロイドホルモンがその場で産生されているか否かは明らかでなかった。研究員は、慶應義塾大学医学部および埼玉医科大学との共同研究で、イメージング質量分析を用いたステロイドホルモンの産生部位の直接可視化を試みている。研究員はこれまで、アルドステロンを特異的に分布可視化する方法を開発した。本研究では、本手法の拡張・応用を目的としている。 平成30年度はアルドステロンの他に、コルチゾール・18-ヒドロキシコルチゾール・18-オキソコルチゾールの特異的検出を可能にした。また、本手法をヒト臨床検体に適用することで、各ステロイドのヒト副腎における分布画像を得ることができた。既に構築済みであったアルドステロンの特異的な組織内分布可視化は世界で初めてであり、既に共著論文として発表を行うと共に、国内外の学会で発表し高い評価を受けた(論文名:Sugiura Y, Takeo E et al. Hypertension. 2018;72:1345-1354. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.118.11243 .impact factor 6.8)。また、拡張したメソッドを含めた分析法の構築をメインにした結果は、現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は研究員が既に構築した分析法の改良をベースに研究を行った。ステロイド標準物質を用いて研究員が構築したアルドステロン特異的検出法の対象化合物拡張を行い、ジラールT誘導体化およびイオントラップ型質量分析系の組み合わせによるアルドステロン・コルチゾール・18-ヒドロキシコルチゾール・18-オキソコルチゾールの検出を可能にした。この際、ジラールT誘導体化の確認・構造異性体との区別をそれぞれに対して行い、各ステロイドを標準溶液内および組織上で特異的・個別に検出することに成功した。また、構築した手法をラット試料およびヒト臨床検体に適用して分析を行い、イメージング手法としての運用性を確認することができた。ヒト臨床検体では、健常人および原発性アルドステロン症の副腎内で各ステロイドの特異的な分布を確認し、CYP11B2酵素に対する免疫染色との比較によって新たな知見を得ることができた。一方、本来行う予定であった定量方法の検討に関しては、まだ開発途中である。
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今後の研究の推進方策 |
拡張したメソッドを含めた手法開発に関して、現在、国際誌に論文投稿中である。また、開発した手法を他の検体に適用し、ステロイドの産生に関する新たな知見を得ることを試みる予定である。 ステロイドの代謝解明に向けた定量方法の検討に関してであるが、予定していた手法ではない方法でステロイドの代謝を観察しようと検討中である。考案中の手法では、より直接的に酵素の代謝能をみることが可能になる。今後は、ステロイドの代謝を観察することを目指して新たな手法の開発を行っていく。
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