研究課題
グラム陰性細菌であるLelliottia amnigenaの巨大化スフェロプラストを用いて、マイクロインジェクション実験を行った。L. amnigena巨大化スフェロプラストは、内膜と外膜が乖離し、大きなペリプラズム空間を形成する。そのペリプラズム空間に墨汁を導入したのが最初のマイクロインジェクションの成果であるが、本研究の目的は、長鎖DNAの導入であるため、細胞質にマイクロインジェクションする必要がある。しかし、L. amnigena巨大化スフェロプラストは、外膜の大きさが20マイクロメートル以上あるのに対し、内膜の大きさが10マイクロメートル程度と小さく、膜の状態も脆かったため、インジェクション針の挿入に耐えられなかった。そこで、内膜が外膜と同程度に伸長し、針の挿入に耐えられる膜を有する巨大化条件を検討した。本研究室では、巨大化に使用しているバクテリアの一つであるDeinococcus grandisを用いて巨大化機構の解明に取り組んでいる。その際、巨大化に使用しているマリン培地に多く含まれている金属塩に注目し、D. grandisの巨大化には、Ca2+あるいはMg2+を要求することがわかった。このことから、膜の伸長に金属塩が関与していることが明らかになった。よって、L. amnigenaを用いて、培地中の金属塩の濃度や組成を変え、巨大化への影響を調べた。その結果、Ca2+、K+、Mg2+を含む培地で、内膜直径が20マイクロメートルを超える細胞が観察された。その巨大化細胞に青色蛍光タンパク質(BFP)溶液をマイクロインジェクションし、細胞質で青色の蛍光を確認できた。よって、培地中の金属塩の濃度と組成を変えることでマイクロインジェクションが可能な細胞を創ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
巨大化する際に、培地中の金属塩を考慮することで膜の状態を変化できることがわかった。よって、マリン培地での巨大化を軸とし、様々なバクテリアをマイクロインジェクションの宿主として使用できる可能性を示した。
DNAのマイクロインジェクション実験に進む。その際、L. amnigenaは形質転換系が確立していないため、形質転換系が確立しているグラム陽性細菌であるEnterococcus faecalisを用いる。L. amnigenaでは、培地を検討する必要があったが、E. faecalisは、マリン培地で巨大化したプロトプラストに対しマイクロインジェクションが可能なことがわかっている。
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Microbiology
巻: 164 ページ: 1361-1371
10.1099/mic.0.000716